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2012.8.6妄想【央お誕生日妄想なのに円撫】


お母さんに貰うお小遣いを少しずつ貯めて、円が僕にプレゼントしてくれた戦隊物のDVD。
喜ぶ僕を見て、ほっとした笑顔を見せた大切な弟。
そのDVDと滅多に見せない円の笑顔は、今でも僕の一番の宝物だった。



「君たちさぁ、年々計画が凝っていってるよね……」

一年前からフランスの店舗を任せられるようになった僕は、今日もいつも通りの時間、いつも通りの店へと足を運んだ。
八月限定のスイーツであるマンゴータルトはかなり人気があって、本日分の生地は少し多めに仕込もうと考えていた……のだけれど。

「まさかフランスまで来てサプライズパーティー開いてくれるとは思わなかったよ。しかも知らぬ間にお店まで休業にして……」
「ふふふ、驚いた?」
「そりゃあ驚きますよ!何、二人とも一体いつこっちに来てたわけ??」
「フランスに着いたのは昨日ですよ、お店のスタッフとは去年の秋くらいから計画してましたけどね」

大成功、と言って楽しそうに笑うのは去年弟の恋人から婚約者になった撫子ちゃん。
毎年毎年この二人は僕の誕生日にサプライズパーティーを開いてくれるのだけれど、その規模が段々と大きくなっていることに若干の心配を隠せない。
今回もまさか二人してフランスに来るとは思わなかった。

店のスタッフと協力して作ったのだろう、テーブルの上に並ぶ豪華な食事。
真ん中には少しだけ形の崩れたケーキが置かれ、チョコレートでできたプレートには【お誕生日おめでとう 央】と書かれていた。
その見覚えのあるケーキと文字に口元が緩む。

「ケーキ、今年も撫子ちゃんが作ってくれたんだね」
「う……やっぱり一目見て分かっちゃうかしら?」
「あなたそんな不器用じゃない方なのにケーキだけはいつまで経っても上達しないですよね」
「こ、こういうのは気持ちが大事だと思うの」
「そーゆーの、自分で言ったら台無しだと思いますけど?」

数ヶ月ぶりに見る二人は全然変わっていなくて、僕はつい声を出して笑ってしまった。

「央、これプレゼント。気に入ってもらえると嬉しいんだけど……」

二人がわざわざ祝いに来てくれただけでも大きなプレゼントだというのに。
少しだけ照れつつお礼を言って受け取った、赤いリボンのかかった箱。
開けてみれば中に入っていたのはエプロンだった。
淡い若葉色のそれはシンプルだけどセンスが良くて、あまりに僕の好みぴったりなことに驚いてしまう。

「……凄い、本当に僕の好みど真ん中だ……」
「良かった…!それね、円と一緒にすっごく悩んで選んだのよ」

そう言った撫子ちゃんは円の方を見て、ね、と微笑んだ。
円はこくりと小さく頷いただけだったけれど、二人の間に流れる空気がとても柔らかいことは誰が見ても分かる。
ずっと円のお兄ちゃんとして二人を見てきた僕には、特に。

『弟であるぼくが央を一番に祝うのは当然のことです』

ふいに蘇った懐かしい声に目を細める。
円はいつだって僕を喜ばせる為に一生懸命になってくれていた。
時には自分の欲しいものをずっと我慢してまで僕にプレゼントをくれたりして、円が我慢してまですることないのにと思うことも何度もあった。

けれど、今の円は昔とは違う。
僕の誕生日を祝うことを心から楽しんでいる。
それはきっと彼女の存在がそうさせているのだろうと思った。

「ねえ央、着けて見せてくれない?」

少しだけ意識を遠くへやっていた僕の目の前で、さらりと長い黒髪が揺れる。
花みたいな香りの中に混じる甘いクリームの匂いが、僕の心臓を小さく高鳴らせた。

二人で祝っていた誕生日を、三人で祝うのが当たり前になったのはいつからだっただろうか。
いつだってぼくの隣にいた円。
その隣にいつの間にか自然と寄り添っていた彼女の存在。

円の笑顔が少しずつ彼女に向けられるようになって、ちょっとだけ悔しさを覚えたこともあった。
そして、円に向けられる彼女の笑顔を見ていて、ちょっとだけ苦しさを覚えたこともあった。

撫子ちゃんの存在が円を変えてくれたことは心から嬉しい。
彼女に感謝しているし、これからも円とずっと仲良くしていてもらいたいとも思う。
二人が僕の誕生日を一緒に祝ってくれるのも凄く嬉しい。

だから、僕に向けられるものとは違う彼女の笑顔が、ほんの少しだけ羨ましいと思っていることは誰にも内緒だった。

「……央?どうしたの?」

つい考え事をしてしまった僕を心配そうに伺う撫子ちゃん。
目をぱちぱちと瞬かせる仕草は幼い時の面影のままで。

「ごめんごめん、何でもないよ」
「本当に?突然こんなことになっちゃって疲れてない?…って、計画した張本人が言う台詞じゃないけれど……」
「いやいや、それは素直に嬉しいよ!二人に会うのだって久しぶりだし…ていうか二人こそ今忙しいんじゃないの?円は自分のお店とか大丈夫なの?それに撫子ちゃんは確か実習中じゃなかったっけ?」

先月送られてきた手紙に彼女は今病院での実習中だと書いてあったし、円もジュエリーデザイナーとしての仕事が詰まっているとか言っていた筈。
矢継ぎ早に問う僕に、彼女がふわりと笑った。

「央のお誕生日なのよ?少しくらい無理するに決まってるじゃない。来年には私にとってだって央はお兄ちゃんになるんだから……」

それ自覚してる?と楽しげに言う撫子ちゃん。
くすくすと零れる声と悪戯っ子みたいな笑顔は、確かに僕に向けられていた。

(お兄ちゃん……か)

兄妹のいない君に、初めてできるお兄ちゃん。

(……うん、それも悪くないかもね)

君が僕に向ける笑顔だって、たったひとつの特別なんだから。


戦隊物のDVDと滅多に見せない円の笑顔。
そして大切な二人が選んでくれたエプロンと、可愛い妹の笑顔。

僕にとっての宝物がまた増えた。


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