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2011,12,15妄想【ケントプールイベント後】


目のやり場に困ってしまうのだ。


「君は水中で目を開けることができるか?」
「開けられることは開けられるんですけど、...あんまりよく見えないです。」
「始めはそうかもしれないな。しかし泳いでいるうちに徐々に慣れるよ。」

そうでしょうか、と小首を傾げる彼女。
その仕草が可愛らしくて、しかしやはりどうしても無防備に露出する鎖骨や肩に目がいってしまう自分自身が嫌になる。

あまり見つめれば変に思われる。
かといって不自然に目を反らせば不審に思われるだろう。

こういう時、イッキュウなら自然に彼女をエスコートするのだろうな、と溜め息を吐きたくなった。

「ケントさん?」
「あ、ああ...、すまない。」

肌を隠す温水で、彼女の頬が少しだけ上気している。
その姿がまた己の心を乱した。

「では、まず水中で目を開ける練習をしてみないか?もし全く回りが見えないようなら潜水をするのも危ないからね。」
「練習、ですか?」
「私も一緒に潜る。君は私の指が何本立っているか当ててみるというのはどうだろう。」
「あ...、何だか楽しそうです。」

ここ最近、あまり表情の無かった彼女が無邪気に笑う。
ただそれだけのことが嬉しく感じた。

呼吸を合わせて水中へ体を沈める。
潜ったばかりなのにもうどこか苦しそうな顔をしている彼女に苦笑して、そして次の瞬間止めていた息を全て吐き出した。

水中で重力の無くなった彼女の胸元が、ゆらりと揺れるその様はとてもじゃないが直視できないものだった。

目を開けようとしていた彼女の細い肩を掴んで、早急に水面へと持ち上げる。

「ぷはっ...!ケ、ケントさん??」
「っはぁ...!すまない、やはり潜水は止めておこう!私の考えが浅はかだったようだ、潜水は良くない!」
「え、え??」

当然だが訳が分からないといった顔をする彼女だったが、そんなことを構ってはいられない。
誰が見ているかも知れないこの場所で、あんなあられもない姿を晒して欲しくなかった。

きょとんと目を真ん丸にする彼女。
濡れて額に張り付いた髪の毛をそっと掻き分けるように撫でる。

小さな肩を少しだけ震わせて恥ずかしそうに俯く目の前の彼女が、愛しくて堪らなかった。

誰にも見せたくない。
自分だけが見ていたい。

なんて独善的で浅ましい想いなのだろう。
それでもその想いを消すことなど不可能だった。

「...何故そんなに生地の少ない水着を着てくるんだ......。」

呟くようにすれば、君はまたきょとんと首を傾げる。
もし今日自分がこの場にいなかったら、そう考えると頭が痛くなった。



「...そんなこともあったな。」
「あの時のケントさん、すごく必死でしたよね。今思うと可笑しいです。」
「酷いな君は。あれでも私なりに色々考えていたんだよ。」

夕暮れの赤い光がブラインドから射し込む部屋に、彼女と二人。
ソファーに隣同士座って、他愛ない会話に花を咲かせる穏やかな時間。

彼女とこうして過ごせる日がくるなんて、あの頃は想像もできなかった。

「また行きませんか?プール、今度は二人で。」
「......いいや、止めておくよ。」

楽しそうにしていた彼女の表情が曇る。
コロコロと変わるその豊かな感情表現も、愛しくて仕方ない。

柔らかな頬を撫でて、首筋に指を滑らせれば、曇った顔が一変してほんのり赤みを帯びる。

「君の素肌を見るのは、私だけにしてくれないか?」
「...........ケント、さん。」

目を瞬かせて、そしてこくりと小さく頷く。
その空色の瞳に吸い込まれるように、近付いた唇が優しく重なった。




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