2011,12,3妄想【円と紐パン】注:大人向け
「あの、本当にどうかしたんですか?さっきからあなた相当挙動不審ですよ?」
「何でもないの、本当にっ、本当に何でもないの!」
「……嘘が下手すぎます撫子さん。」
円の訝しげな視線を避けるように目を伏せる。
彼の部屋で年末に旅行でも行こうかと旅行雑誌をテーブルに広げて、ソファに並んで座って。
私は彼に不審がられる程の間、微動だにしていなかった。
というより、少しも動くことができなかったのだ。
きっかけは、大学の友人の一言だった。
「九楼さんの勝負下着ってどんな?」
「…………はい?」
勝負下着という響きがあまりにも身近でなかったので、一瞬で色々な考えが頭をグルグルと廻った。
世の女性は、皆…というのは大袈裟かもしれないがほとんどの人達が「勝負下着」と呼べる物を持っているそうだ。
はっきり言ってカルチャーショックだ。
私だって、円と所謂そういう行為をするだろうという日には下着に気を使う。
比較的新しく購入した物だったり、お気に入りの物だったり。
しかし勝負下着とは、それらとはまた全然違うものらしい。
別にそんなに気にしたわけではないけれど、そろそろ新しい下着が欲しいと思っていたところだから。
ふらりと立ち寄ったランジェリーショップ。
自分自身に言い訳をしつつ、普段選ばないようなデザインの下着を購入してみたのだった。
(慣れないことをするべきじゃなかったわ…。)
後悔してももう遅い。
「まぁ、いいですけど…。そろそろ食事にしません?もうお昼過ぎましたし。」
「ええと、私はまだ大丈夫よ。…円、お腹が空いたなら先に食べてきたら?」
「……なんで一人で食べに行かなきゃならないんですか。」
「…そうよね。」
「何なんです、そろそろ白状したらどうですか?」
「何でもないってば。そうだわ、ちょっと喉が渇いたから飲み物もらえるかしら?」
「そこに紅茶入ってますけど。」
「………オレンジジュースが飲みたいの。」
苦しい。
分かっているけれど、どうにかして2分だけでも一人になりたい。
「あなたって本当に頑固ですよね。わかりました。」
「え…?」
ジュースを取りに行ってくれるのかと、思わず安堵の笑みが漏れそうになった。
「言葉で聞いても駄目なようなので体に聞きます。」
「えっ???」
のし、っと円の大きな体が私に覆いかぶさる。
慌てて腰を浮かそうとして、はっと留まった。
数十分前から腰の左側にある解放感。
勝負下着と称して買ったサイドをリボンで結ぶシルクのパンツの紐が解けていたのだ。
「ちょっ、だめ!円!!」
「大人しくしてくださいよ…。」
「んっ、んんー…!」
私の抗議なんて聞こえていないのか、無遠慮に私の口内へ滑り込む彼の舌。
こういう時の円は本当に強引だ。
「っは……、ん……んぅ…。」
そして、器用に私の舌をからめとってしまう彼の口付けに、毎回力が抜けて抵抗できなくなってしまうのだ。
するりと彼の手がウエストラインを撫で下りて、ぴたっとその動きが止まる。
キスの余韻でぼんやりとする頭が、一瞬で覚醒した。
焦って円の手を抑えるが、時既に遅し。
「……………。」
「……………。」
「……………下着着けてないんですか?」
「―――っ着けてるわよ!!!」
茹で上がりそうな程顔を赤くする私を余所に、でもこれ…、と腰に手を何度も滑らせる円。
紐パンツが解けたのです。
なんて言えるはずもなくて、黙り込んでしまう私。
少しだけ間があって、また円の舌がぬるりと私の唇を割った。
びくっと体が震えた拍子に、スカートの中に極自然に入り込んできた指先。
意地悪なその指は、腰回りを数秒探るように動いて。
「……へぇ、なるほど…。」
そう言って目を細めて笑顔を浮かべた円。
真っ赤になりながらも睨み付ける私に、酷く満足そうな表情でキスを落とす意地の悪い恋人。
「お昼は後にしましょう。」
「え、きゃっ!」
ふわりと横抱きにされてベッドへ運ばれる私を、溶けそうな程優しい笑顔で見つめる円。
私の勝負下着デビューは、想像していたものとは大分違ってしまったけれど。
彼が嬉しそうだからまぁいいか。なんて思ってしまう私も相当彼に溺れているな、と頭の中で苦笑した。
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