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2011,11,16【円撫央について考える】


彼女を「好き」だと意識したのはいつ頃だっただろうか。
それが友達への感情と違う「好き」だと気付いたのは、いつ頃だったのだろうか。

「撫子ちゃん、最近お店に来なくなったねー。やっぱ忙しいの?」
「そうね、実習が始まってしまったから…。ごめんなさいね。」
「いやいや、謝ることじゃないよ。それにしても大変だよね、実習ってストレス溜まったりするでしょ。」
「ええ。でも央のスイーツを食べられないことの方がストレスだわ。」
「はは、そう言ってもらえると嬉しいな。」

彼女と談笑をしながら、ちらりと斜め前の席に座る円の様子を窺った。
普段と変わらない表情の無い顔で焼酎を飲んでいるが、どこか不機嫌そうに見える気がするのは僕の気のせいなのかもしれない。

時々僕らは三人でこうして食事をする。
それはランチだったり、今のように居酒屋だったり、少しだけ開いた時間のお茶だったりと様々だが、必ず決まっているのは「三人一緒」ということだ。
彼女と二人きりにはならない。それが僕と円の中の暗黙の了解だった。

そのことについて話し合ったわけじゃない。
気まずいとか聞き辛いとかそんな理由で話し合わないわけじゃなく、彼女のことをどう思っているのか、なんて聞かなくてもお互い分かりきっていたから。

「あ、円。この間雑誌で見かけたネックレスすごく素敵だったわ!今シーズンの新作は
色が柔らかくて繊細ね。」
「ありがとうございます。……気に入りましたか?」
「ええ!私の好みにぴったりはまってしまったから、実はもう買っちゃったの。」
「ちょ…、言ってくれれば差し上げましたよ。わざわざ買わなくたっていいでしょうに…。」
「ううん、本当に気に入ったものはきちんと自分で購入したいもの。だから、もし私が『ちょうだい』って円に言ったら気に入らなかったと思ってね。」
「……あなたって人は…。本当に変わった人ですね。」

ふふ、と柔らかに笑った彼女と、困ったように笑った円の視線が交差していた。
胸が、痛い。

彼女と円が話している姿を見て胸が痛いと感じるようになったのは、いつ頃からだっただろうか。
その痛みは、治まることを知らずに今もどんどん酷さを増していく。

もう限界、そう何度思ったことか知れない。
こんなに痛いなら、全て忘れて二人の幸せを祈った方がずっと楽だから。
でも、今更そんなことはできなかった。

僕の彼女への想いに円も気付いているから。

僕がもし彼女と恋人になったとしたら、円は傷つく。
しかし僕が彼女を諦めれば、円はきっとそれ以上に傷つくだろう。

「ねぇ、私の実習が終わったらちょっと遠出しない?紅葉も綺麗な頃だろうからドライブとか、どう?」
「いいんじゃないですか、車出しますよ。」
「央はどう?…忙しいかしら?」

平行線な僕達の未来は、どんな形をしているのかな。
今は全然先なんて見えない。

「いいね、じゃあ腕によりをかけてお弁当作っちゃおうかな!」

ぱっと笑顔を輝かせて喜ぶ彼女が眩しくて思わず目を細める。
今はまだ、このまま君の笑顔を見ていたいと思った。




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