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2012,11,12妄想【寅と紅葉狩り】


「わぁ!凄い景色!!丁度見頃で良かったわね、トラ!」
「随分元気だな、お嬢。そんなに嬉しいんか?」
「...トラはつまらない?」
「いや、...俺も楽しいよ。」

ふわりと目を細めて、風で少し乱れた撫子の髪の毛をすくように撫でる寅之助。
思わぬ彼の素直な言葉と、泣きたくなるくらい優しい指先が、撫子の胸を甘く締め付けた。

絶景だな、そう言って山を彩る木々を眺める寅之助。
撫子は大好きなその横顔を見つめる。

「......トラの髪の毛、綺麗ね。秋、みたいで...。」

紅く色付いた世界に溶け込むような寅之助の姿を見て、感じたままを口にした撫子。
数回目を瞬かせて、寅之助がくしゃっと表情を崩す。

「ったく、まーた変なこと言い出したな。本当に変わった女だよ、お前は。」
「......。」

失礼な、そう言い返そうと思った撫子だったが、頬を撫でる手の優しさに文句は喉の奥へと消えた。

込み上げる「愛しい」気持ちを視線で伝えるようにじっと寅之助を見上げれば、ゆっくりと近づく距離。
普段隠れた瞳がちらりと覗いて、その黄金色にまた秋を感じ、吸い込まれるように視線を反らずことができない。

「...なんだよ、目、閉じねぇの?」
「...なんだか勿体なくて......。」
「はぁ?...ま、いーけどな.......。」
「...ん.........。」

与えられる柔らかな刺激。
涼やかな秋風が木々を揺らしてサワサワと心地好い音だけが響く中、撫子はそっと目を閉じた。




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