2012,3,26妄想【寅と小悪魔な撫子ちゃんが書きたかっただけ】
「…っや…。ト、ラ……。」
「逃げんなって……。」
「だ…って…んんっ…!」
いつもよりずっと、ずっと深いキス。
後頭部を押さえられて、差し込まれた舌でざらりと上顎をなぞられて。
言葉も呼吸も全てトラの中に飲み込まれてしまう。
酸素不足で頭がぼんやりしてもトラのキスは終わらなくて。
やがて抵抗する力も無くなった私の体をソファに寝かせた彼が、ゆっくりと跨る。
「そのままいい子にしてろよ…?」
私を見下ろす優しい笑顔と声は恐ろしいくらい色っぽい。
妖艶に光った藍色の瞳に、体の奥に熱が灯るのが分かった。
少しごつごつした指先がするりと首筋を伝って。
感じる刺激はほんの些細な筈なのに、私の体はびくっと大きく跳ねる。
「…っいや、ぁ……ど…して……。」
「どうしてって…挑発したのはお前だろ?」
「何…ふ、あっ!」
ちゅ、とリップ音を立てて吸われた鎖骨。
薄い皮膚がじんじんと痺れて、堪えきれなかった一滴が頬を濡らした。
「…お嬢って頭はいいけど馬鹿だよなぁ。オレの前で他の男の話なんかしたらこうなるって分かんない?」
少しだけ体を離したトラが、羽根みたいな軽さで私の頭を撫でる。
胸の奥がずくん、と甘く疼いた。
体に灯った熱は、じわりと体中に広がる。
遠退いたトラの体温を欲して追う。
「トラ………。」
熱っぽい視線で、声でトラの名を呼べば、彼は酷薄そうに笑って。
「欲しいなら強請ってみろよ…。貪欲なお嬢だもんな、強請るのは得意だろ?」
ぺろりと唇を舐めて、私を挑発する。
両手を伸ばして、細い赤髪に指をさして。
そのまま引き寄せて口角を上げたままの唇を奪う。
一方的だった私のキスに、すぐにトラが応えてお互いの舌が絡まって。
私の名前を愛しそうに呼んで、愛しそうに触れる。
可愛い、可愛い、私のトラ。
きっとトラが思っているよりもずっと、私は貪欲でお強請りが得意。
――――誘ったのは、どっち?
prev / next