2012,2,4妄想【央撫でバレンタイン】
ベージュ色の包み紙に、淡い桃色と濃茶の細いリボン。
シンプルで可愛らしい色合いが、とても彼女らしいと思った。
「凄くいい香りだね…。これ、オレンジピールも手作り?」
「ええ。これがオレンジで、こっちはグレープフルーツなの。」
箱の中からひと欠片摘まんで見せた彼女。
その手をそっと取って、自分の口元に寄せた。
息を飲んで恥ずかしそうに顔を赤らめる姿から目を離さないまま、ぱくり、と一口で食べる。
ふわ、と爽やかな柑橘系の香りが広がった。
「うん、美味しい…。」
「…良かった。」
安堵の笑みを浮かべた彼女が、僕に掴まれた手をやんわり解こうとする。
逃げようとした腕を軽く引いて、グラニュー糖の付いた人差し指に舌を滑らせた。
「っ、なか、ば……。」
「……甘い。ねぇ、もっと食べさせてよ。」
少しだけ上目遣いで。
普段より声を低めに出して。
甘ったるい笑みを口元に浮かべて。
彼女がこの表情に弱いのを僕は知っている。
困ったみたいに眉尻を下げてるけど、きっと君は断らないでしょ?
僕の思い通り、仕方ないわね、小さくそう呟いて。
君はまた箱の中から、ひと欠片。
僕の口に運ばれる度に君の指先を一緒に味わう。
二度目は、ちゅ、と軽く口付けて。
三度目は指ごと口に含んだ。
「ン…、やっ………。」
「嫌?本当に?」
「……っ、ん…!」
弱々し過ぎる抵抗も、僕にとってはただ誘っているようにしか感じられない。
甘過ぎる指先に、甘過ぎる君の声。
もう食べたい。君を。
「ふ、んんっ…!」
「……ん…。」
深く重ねた唇。
もっと奥まで、もっと全部を味わいたいと絡む舌。
チョコより甘い君は、僕をどこまでも溶ろかすんだ。
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