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2012,1,7妄想【円撫で壊れた世界の移動前夜ピロートーク】


「円………。」
「…まだ寝てなかったんですか?早く休まないと、明日は早朝から移動なんですから体が持ちませんよ。」

サラリ、と私の髪の毛に指を通して円の低い声が響く。
この地区に拠点を構えてから4ヶ月。
最近政府の監視がこの辺りまで伸びてきた為に、明日、私達はこの場所を離れることに決めた。

頭を撫でた彼の手が、優しく私の背中を叩く。
まるで子供をあやすように、何度も。

移動する前夜、決まって円は私を抱き締めたまま眠った。
体を繋げることもなく、ただ私を宝物のように大切に抱いて。

「…ねぇ、もし明日政府に私が捕まったとしたら、円だけはきっと逃げてね……。」

お願い、と彼の胸に顔を埋めた。
私は今日の様な前夜、決まってこの言葉を円に告げる。

「…そんなお願い聞けるわけないでしょ。あなたって本当に馬鹿ですね。」

そして、彼がこう言うのもまた決まっていた。

「駄目、逃げて。」
「お断りします。」
「……円のばか。」
「はいはい、馬鹿で結構ですよ。」

私を抱き締める腕に、痛いほどの力が籠る。
離さない。絶対に。
そう全身で伝えるように。

何を犠牲にしても相手を守りたい。
そう切に願うのはお互い一緒で。

誰よりも愛しいからこそ、平行線なこの想い。

どうか。

この愛しい存在を奪わないで。
星の無いこの夜空に祈りを捧げる。

どうか……。




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