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2012,1,5妄想【終夜のフェチ】


パラリ。
細い指が蔵書のページを捲る。

パラリ、パラリ。
幾度も繰り返しされる動きを目で追う。

流れるような仕草で、少々冷めた紅茶を飲もうと伸ばされた彼女の手。
カップに届く寸前で、私はその手を取った。

「……終夜?」

不思議そうにこちらを見る撫子。
何も告げずに、白くて滑らかな甲を己の舌で舐め上げた。

「…っひぁ!」

驚いたように高い声を上げた彼女の頬が、一気に桃色へと変化する。
あまり良い趣味とは言えないが、彼女がこうして慌てふためく姿を見るのは嫌いではない。

逃れようと力の入る腕を抑え、甲から華奢な指へと舌を滑らせる。
ぴく、と小さく揺れた小指を口に含み、その形を確かめるように。

「………っ。」

歯を立てれば、撫子が息をつめた。
口に含んだまま彼女を伺うと、困惑した表情を浮かべつつも潤んだ眼差しが私を捉えている。

嫌がっているわけではない。
そう理解した。

赤子の肌ように柔らかな手の平に、幾つもの口付けを落とし。
薬指の付け根を舌先で擽り、きつく吸い上げる。

「んっ…、しゅ、や………っ……。」

下唇を噛んで声を抑える撫子を見てしまえば、愛しさが溢れて止まらなくなる。

ひんやりと冷たかった白い指は仄かに色づき体温を上げて。
切り揃えられた爪はまるで桜の花びらのよう。

この上なく美しく、そして扇情的だった。

自分の内側に生まれる熱。
この感情を抑える術など持ち合わせてはいなかった。

そなたの指が堪らない。
私のふぇちしずむ。


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