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2011,12,19妄想【円撫で会えないクリスマス】


「そう...、じゃあやっぱりクリスマスは忙しいのね。」

自分で思うよりも沈んだ声が出てしまい、
しまった、と後悔した。

『...すみません。』

電話越しに聞こえてくる円の声が凄く申し訳なさそうで、ずき、と胸が痛む。

「あ、謝らないで?ジュエリーデザイナーがクリスマスに暇だったら困るもの。うちの学校の女の子達も皆HANABUSAのアクセサリーが欲しいって言ってるのよ、恋人としては鼻が高いわ。」

できるだけ明るく言えば、そうですか、と穏やかな返事が返ってきた。

『26日は何とか時間作りますから、夜になるとは思いますけど会えますか?』
「ええ、連絡待ってるわ。」

電話を切って、画面に表示された通話時間はたったの4分。
深い溜め息を吐いてベッドに携帯を投げた。

仕方ないことだと分かっている。
彼の仕事に対する姿勢は尊敬するし、それこそ円のジュエリーが人気な事実は喜ばしいことだ。

けれど、やっぱりどうしたって淋しいと思ってしまうのも仕方ない。

「別にキリスト教じゃないし...。」

静かな部屋に虚しく落ちた独り言。

会えないだろうと分かっていながら、もしかしたらという期待を捨てきれずに休みをとってしまった自分が、何だかとても惨めに感じた。


クリスマス当日。

何も予定のない休日は時間が過ぎるのがやたらと遅い。
時折友達から賑やかなメールが届いて、少しだけ救われて、そして少しだけ淋しくなる。

何気なく付けたテレビで円のジュエリーが特集されていて、それを見てまた少し落ち込んだ。


円に逢いたい。


部屋の窓を開ければ、しんと冷えた空気に星が栄える夜空。
ただ、円を想って過ぎる聖なる夜。

無意識に流れていた涙もそのままに、早く今日が終わるようにと祈った。


いつの間に眠ってしまっていたのか、鳴り響く携帯のコールに目が覚める。
表示された名前に、一瞬で完全に覚醒した。

「も、もしもし??」
『ふ、はは...、何焦ってんですか?あ、もう寝てました?』

聞きたかった声。
何だかうまく言葉が出てこなかった。

「え、と...、お仕事は終わったの?」
『いえ、今は休憩中ですが、ちょっとあなたの声が聞きたくなったので。』

いつにない彼の甘い言葉に、ふわりと溶ける心。
胸の中心がきゅっと締め付けられる。

耳元で響く円の声があまりにも優しかったから、私も自然と素直な言葉が溢れた。

「私も円の声が聞きたかったわ。...本当は、会いたかった...。」
『......ええ、ぼくもです。』

すとん、と心に落ちた柔らかな気持ち。

会えないことが辛かったわけじゃなかった。
会いたいと言えなかったことが辛かったのだと分かった。

『もし今日会っていたら、どんなことがしたかったですか?』
「え......?」

不意にされた質問に、思わず真剣に考え込んでしまう。

「今日会っていたら......。」

何がしたかっただろう。

「そうね...、一緒にご飯を食べて、ケーキを食べて、ちょっとだけ街を歩いたり...?」
『はは、欲が無いですねあなた。それじゃいつもと同じですけど?』
「あ......。」

言われて初めて気付く。
特別な日だからといって、特別なことがしたいわけじゃなかった。

今までもやもやと悩んでいたのが嘘みたいに消えて、何だか可笑しくなってしまう。

「ふふ、あははっ。」
『...?どうしたんですか突然。頭大丈夫ですか?』
「ちょ、失礼ね...っ、ふふふ...。」
『......本当に大丈夫ですか?』

笑いが止まらない私に、円は呆れたように大袈裟な溜め息を吐いて、それがまた可笑しくてもっと笑ってしまった。


「ねぇ円、明日は一緒にケーキ食べましょうね。」
『そうですね。あなたの好きなガトーショコラ、用意しておきますよ。』


円に逢いたいと思う夜。

それは特別な日も、そうでない日も。




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