CZblog妄想まとめ | ナノ

2011,12,12妄想【円と添い寝】


「ふ…、ん……。」
「…撫子さん…口、開けて……。」
「んぁ……、待って、…円、待って……っ!」
「……何ですか一体…。」

彼の見かけより厚い胸元を何度も叩けば、やっとまともに呼吸をすることが許される。
私の顎を持ち上げたまま、唇を離した円が少しだけ不満げに眉を顰めていた。
子供っぽいその仕草をちょっと可愛らしいと思ってしまったことは、彼には絶対に言えない。

「今日は、その……ダメなの。」
「駄目って……、ああ…。」

納得、といった表情をしてすぐに円はまた眉間に皺を寄せた。

「ちょっと早すぎませんか?今日12日ですよ、普段なら来週頭くらいでしょ。」
「あ…、そういえば……。って、どうして円がそんなこと知ってるのよ!?」
「何でって、当然でしょう。ぼくはあなたの恋人なんですから。」

表情を変えずに返す円に対して、私は耳までかあっと熱くなってしまう。
恋人ってそういうものだろうか。
月経周期まで熟知されるなんて、一般的にはそれが普通なのだろうか。

そんなことをぐるぐる考えていると、ふと近くで感じた視線。
ひ、っと思う程に近い位置から私を見つめている円がいた。

「な、なあに?」
「寝ましょう。」
「は?…っきゃ!」

不意に腕が添えられてカクッと折れる膝に倒れそうになった私を、難なく抱きかかえた彼。
一瞬のことに驚く暇もなくて、私はただ口をパクパクさせることしかできなかった。



「あの……、円?」
「黙って寝てください、子供じゃないんですから。」
「な…、布団に入って数秒で眠れるわけないでしょ??それこそ子供じゃな、い…。」

少しだけ睨む彼の顔は、見上げたすぐそこにあって。
文句を言ったのに、語尾は酷く弱々しいものになってしまった。

私の体を抱え込むようにして、私の頭は彼の腕の上に乗せられて、時折背中をゆっくりと撫でられて。
この柔らかい空気と穏やかな時間は何なのだろう。
そんな風に戸惑ってしまうくらいに円が優しすぎた。

「ちょっと調子が狂うんだけど……。」
「調子が狂ってるって自覚があるならしっかり休みを取ってください。あなた放っておくと倒れるまで自分の体調の悪さに気付かないでしょう、それって医者を目指す人間としてどうなんですか全く……。」

おでこの辺りで饒舌に私を叱咤する円。

(...そういう意味じゃないのに。)

そう言いたかったけれど、言葉にはならなかった。
時折吐き出される息が私の前髪を揺らして、ほんの少しだけくすぐったい。

「………何笑ってんですか。」
「あら、…笑ってた?」
「ええ、気味が悪いくらいにやけてました。」
「ふふふ、それはごめんなさい。」
「……おかしくなるくらい疲れてるんですね。寝てください。」

心配だから、その一言が言えない円。
口だけは本当に素直じゃない、私の愛しい恋人。
照れくさいのか、さっきよりぎゅっと私の体を抱き寄せる彼。

頭の上にそっとキスを落とされて、おやすみなさい、と甘い声が降った。

規則正しい心音を子守唄代わりに、今夜私は、誰よりも幸せな夢を見るのだろう。






prev / next
[ back to CZblog妄想top ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -