マスター様 | ナノ


「だーっ!レコードを鍋しき代わりにすんじゃねえ!それもう廃盤になってんだぞ!?あと時田!スノースプレーが窓からはみ出て壁にかかってんだよ!どんだけ不器用なんだお前!!海堂は台所に近付くな!加納っ!見て見ぬふりしてねーで俺を手伝え!」

呆れるくらい何も変わっていないCZメンバー。
いや、大人になったぶん質がわりいと言えるだろう。

「見ろ寅之助、なんと私は今日の為にだんすを会得してきたのだ。」
「トラさん、お皿とコップが足りません。」
「オーブンが小さすぎて鶏肉が入らないなぁ。細かく切るしかないか…。」
「マスターへのプレゼント、ここに届くようにした筈なのに…まだ来ないな…。」
「おい、このパエリア海老入ってるぞ?マスターは海老嫌いだがいいのか?」

(…こいつらにオレの声は聞こえてないのか?)

本日何度目か分からない重たすぎる溜め息を吐いた時携帯に着信があった。

「あ、マスターじゃない?今日は授業だけで実習無い筈だから、そろそろ来る頃だと思ったんだ。」
「どんだけ調べついてんだよ、怖ぇよ。」

騒がしかった部屋内がシンと静まって、オレは通話ボタンを押した。

『もしもし、トラ?今駅についたわ。』
「おう、じゃあ迎え行くからいつもんトコで待ってろよ。」
『ええ。いるものがあったら買っておくけど、何かある?』
「あー…、紙コップ買っといてくんねぇ?」
『紙コップ?いいけど、…何に使うの?』
「まぁ、ちょっとな。」
『??分かったわ、買って待ってるわね。』
「ああ、じゃーな。」

通話が終わった途端また騒がしさを取り戻す部屋。

「いつもお迎えに行ってるんだ?トラ君優しー。」
「確か駅からこのアパートまで五分とかかりませんでしたよね。」
「意外と過保護だな西園寺。」
「ふふ、マスターは可愛いから心配になっちゃうよね。」
「昔から面倒見が良い奴なのだ、寅之助は…。」
「…生暖かい目で見んな。なんかムカつく。」

好き勝手ほざくこいつらを背に。
財布と鍵だけを持って、あいつの待つ駅へと向かった。



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