もう少しで薄桃色の頬に届きそうになったその時、ぎゅっと手を掴まれる。
その強い力にハッと我に返ってマイと目が合えば、抜けるような空色の瞳が不安げに揺れていた。
「トーマ??どうしたの、大丈夫っ??」
「……え…?」
「だって顔色が真っ青だよ?横になる??」
泣きそうな顔は、まるで子供の頃のまま。
知らない間に入っていた体の力が、すぅっと音を立てて抜けていった。
おまえはいつだってそうだね。
そうやっていとも簡単に俺の中に入り込んで、渦巻く毒を消し去ってしまう。
だから俺は、おまえから離れられないんだ。
「…トーマ、冷たいお水とかいる?」
好きだよ。
「ん、平気だよ、サンキュ。」
好きだよ。
「どこか痛い?薬が欲しければ持ってくるけど……。」
好きだよ。
「はは、おまえ相変わらず心配性だね。」
好きだよ。
「トーマに言われたくないけど。」
おまえが好きだよ。
だから、もう少しだけ俺の傍にいて?
兄貴でいいから。
幼馴染でいいから。
おまえにとってのどんな存在でもいいから。
だからどうか、もう少しだけ。
俺を、おまえの一番でいさせて。
おまえの笑顔を、一番傍で見させて。
どうか、もう少しだけ。
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