シン短編改造計画 | ナノ


マイの口の中でコロコロと転がる飴。
その感触が棒を通じてオレの手に伝わる。

(なんか……やばい…。)

直径3センチくらいの飴はマイの口内をほとんど埋め尽くしていて、棒を持つ指先を揺らす度に小さな舌がちらりと覗く。
赤いアメと赤い唇がやたら扇情的で、背筋がぞくりと粟立った。

吸い寄せられるように、ゆっくりと近づく。

「……味見、させて。」

静かな声でそう言って、少しだけ飴を手前に引く。
そうすることで自然と緩んだ唇の隙間から、するりと舌を滑り込ませた。

途端に広がった甘ったるいフルーツの香りに、一瞬眩暈を覚える。

「んぅぅ…っ…ふ、…ん……。」

鼻にかかった声は不満を訴えているのだろうけど、オレには誘っているようにしか聞こえない。
縮こまった舌全体をひと舐めして、根元を擽る様にすれば益々漏れる甘い声。
マイの口の中で、柔らかな舌と滑らかなアメの表面を交互になぞった。

時々、カコ、と飴が歯に当たる音がアパートの廊下に響く。
飲み下せない唾液が零れそうになるのを舐め取る度、華奢な体が小さく震えた。

マイの中はどこもかしこも甘くて、オレはそれを夢中で味わう。
オレの腕を力いっぱい掴んでいた細い指先は、いつの間にか力が抜けてだらりと垂れている。
今にも崩れ落ちてしまいそうなマイの体を支えながら、より深くへと舌を滑らせた。


どれだけそうしていたのか、オレの舌もマイの舌も溶ける飴と同じだけの甘さになった頃、最後に飴を舌で絡み取って唇を離す。
涙目で上目遣いに睨まれて、そんな目で見られたら悪戯では済まなくなるというのに。

こいつはこれが無自覚だから困る。

「…お菓子あげたのに、どうして悪戯するのかな。」

飴の色素で真っ赤になった唇を尖らせて弱々しく抗議する姿に、思わず噴き出しそうになるのを堪える。
顔に出やすいマイ。恥ずかしがっていても嫌がってはいないことが分かるから。

「別に悪戯してないじゃん。一緒に飴舐めただけだろ?」
「うぅぅ……。」

一回り程小さくなった飴を目の前にチラつかせれば、
深すぎるキスを思い出したのか、顔を火照らせ俯くマイ。
今さっきまで触れていた唇は赤く艶やかに濡れていて、また触れたくなってしまう。
欲求を抑える理由なんて見当たらないオレは、今度は軽く啄ばむように口付ける。

「マイ…、今日出かけるのやめない…?」
「っあ……。」

熱を帯びた耳朶の裏を人差し指で撫でながら唇の上で甘えた声を出せば、ぶるりと震えて応えるマイの素直な身体。

開いたドアを閉めて、後ろ手に鍵をかけて、飴みたいな唇を塞いで。

お菓子あげたって結局同じじゃない、と膨れるマイ。
今頃気づいたのかよ、と笑えばマイは抱き寄せるオレの胸を小さく叩いた。

赤く色づいた唇はチェリー味で、本当に飴玉みたいだ。
いっそおまえがお菓子なら丸ごと食べてしまえるのに。
少し本気でそう思うオレはどこかおかしいのかもしれない。

ずっと手に入れたかったおまえだから。
こうして欲張りになってしまうのは仕方のないことだと思う。

オレにとってのお菓子はいつだっておまえだから。

Trick and treat。




【おまけ】

「おまえらね。もうちょっと人目ってもんを気にしなさいよ。」
「…?何だよいきなり。」
「昨日、マイん家に母さんが作ったタルト持って行ったんだよ。」
「ええっ!?ト、トーマうちに来たの??」
「公共の場であんまり無茶するんじゃないよ、シン。」
「……うるさいよ。」

(シンの馬鹿!!トーマに見られちゃったじゃん!!)
(いいじゃん、別に。)





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