「今はたくさんあるんだけどね。」
顔を上げて笑った俺に、君はほっとしたみたいに表情を和らげる。
今日は短冊に何を書いたの?と俺に問う唇に軽くキスをして抱きしめれば、話をはぐらかされたことに不満げな声を漏らす君。
撫子と出会ってから、俺の願いは尽きることが無いよ。
君ともっと話ができますように。
君ともっと仲良くなれますように。
君にもっと近づくことができますように。
君がまた俺を見つめてくれますように。
君がまた俺の名前を呼んでくれますように。
君とまた何でもない日常が過ごせますように。
君が二度と傷つきませんように。
君と生きるこの世界が幸せで溢れますように。
来年もこうして君の隣にいるのが俺でありますように。
明日も君の笑顔が見られますように。
いつまでも、君とずっと一緒にいられますように……。
とても一枚の短冊になんか書ききれない、俺の願い事。
何年経っても何十年経っても変わることの無い願い。
俺の中にあるのはいつだって君への願いだけなんだと知ったら、君は呆れるかな。
もし呆れられたとしても撫子が笑っていてくれればいい。
「いつか、また星が見られるようになるかな……。」
ぽつりと呟いた俺に、
「きっとなるわよ。」
君は当然みたいにそう言った。
緑の葉をさらりと揺らす笹は無い。
夜空に光る星は無い。
けれど君がいる。
今日も俺の隣に。
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