鷹斗短編改造計画 | ナノ


「どう?少しは体楽になった?」
「えぇ、おかげさまで…。」

身体を起こそうとした私を助ける様に、鷹斗が背中を支えてくれる。
水分を取って、と渡されたコップの水を勧められたまま素直に飲んだ。

カフェで私の体調が悪い事に気づいた鷹斗は、
すぐさま私の手を引いて店を後にし、大通りで素早くタクシーを捕まえた。
そして気付いた時には私は鷹斗の部屋にいて、彼のベッドに寝かされていた。

温かい布団に包まれて、少しのスープ(鷹斗の家のお手伝いさんが作った)を胃に入れて、
薬を飲んで一眠りしたら体調は随分回復しているようだった。

「良かった……。さっきまでは顔色がすごく悪かったから…。」
「鷹斗………。」

汗を拭いてこれに着替えて、と、至れり尽くせりの気遣いをくれる鷹斗。

「おかゆ作ってもらったから、少しでもいいから食べようね。リンゴもあるよ。これは俺が剥いたんだ。」

にこっと笑って、お皿に並べられた形良く切られたリンゴを見せてくれる。
デートが途中で中止になってしまったというのに、少しも嫌な顔をせずに私の看病をしてくれている鷹斗。
その優しさが嬉しくもあり、その反面心苦しくもあった。

「ごめんなさい。久々のデートだったのに…。」

口に出したらなんだか胸がいっぱいになって、鼻の奥がツンと痛くなる。
熱のせいで、少し感情が高ぶっているのかもしれない。
こんな大事な日に風邪なんて引いてしまう自分自身が情けなかった。

涙目で謝る私を見た鷹斗が驚いたように目を見開く。

「謝らないでよ、撫子。俺、全然気にしてないから。」
「でも…、せっかく有休までとってくれたのに……。」

俯いた私の頭を、まるで子供をあやすみたいに何度も鷹斗は撫でる。

「…こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど、俺、今ちょっと嬉しいんだ。」
「嬉しい…??」

予想していなかった言葉に顔を上げると、鷹斗は少し照れくさそうに笑っていた。
その笑顔がとても可愛くて胸がきゅんと甘い音を立てる。
男の人相手に可愛いだなんて、本人としては嬉しくないのだろうけれど。

「だってさ、こんなふうに君の一番近くで看病できるのって彼氏の特権ってやつでしょ?」

悪戯っ子みたいな笑顔を見せてそう言った鷹斗に、ちょっと面喰ってしまう。
何故この人はこんなにも優しくて前向きなんだろう。
くよくよ悩むこちらが馬鹿らしくなってしまうくらいに。

何だかうまく言葉が返せなくて、というか何て返したらいいのかが分からなくて、ただ鷹斗の顔を見つめる。
不謹慎だよね、なんて笑う鷹斗と目が合ってドキンと跳ねた心臓。

「俺の為に無理しちゃう撫子の気持ちはすごく嬉しいし、そんな君が大好きだけど……。」

これ以上ないくらいに優しい彼の声。クラクラする頭。
鷹斗は私の額に汗ではりついた前髪を優しく払いながら言葉を続ける。

「俺にはもっと甘えて…?」

極上の笑顔に乗せられた言葉は、
高かった私の体温を更に上げてくれた。






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