NARUTO短編改造計画 | ナノ

some rice cake


しんしんと、降り積もる雪が暗い森を白く照らす。
支給されたマントを纏っていても、肌を刺すような冷たい空気に、容赦なく体力は奪われていた。

抜け忍や山賊を寄せ集めて作られた10人程の組織。
その隠れ家を見つけて、今日で丸3日が経つ。
応援をと送った式も、恐らく奴等にやられてしまったのだろう。

「ねぇー、カカシ。今何時だろう。」
「緊張感無いねお前…。」
「だって今日で3日でしょ?てことは大晦日じゃん。」

四人いた暗部も、今では俺とこいつの二人だけ。

「せっかく御節の材料も用意してあったのになー…。」

ぶつぶつと文句を溢す鳥の面を被った名無しとは、所謂腐れ縁だった。
明確に付き合っているわけではないけれど、はたから見れば俺達は恋人同士なのだろう。
名無しに対する気持ちは、多分愛情ってやつなのだろうと自覚している。

しかし、結局俺達は忍。
きっとお前を手にしてしまえば、いつか後悔するから。

一歩離れたこの距離感が丁度いい。


「っ、カカシ……。」
「……ああ。」

ざわ、と膨れ上がったチャクラ。
恐らく奴等が俺達の存在に気付いたのだろう。

「名無し、行けるか?」
「誰に聞いてるのよ、当たり前でしょ。」

背中の短刀を握って強気に言い放った姿を見て、思わず頭の中で苦笑する。
こいつのこういう所が堪らなく好きだ。

どこか神聖さを感じる程真っ白な森に、緊張が走った時。
それを破ったのはまた名無し。

「お雑煮はお餅何個入れる?」
「…………は?」
「帰ったらお雑煮だけでも作るから、何個?」
「………………。」

この絶望的な状況下でその台詞。
こいつは本当に危機感が無い。

「カカシとこんな中途半端で死ぬ気なんて無いからね、私。だから生きて帰るよ。」

分かった?と念を押すように。
声がほんの少し震えていたのは、気のせいなんかじゃないと思った。

一歩離れたこの距離感が丁度いい。

お前は俺の張る一線を、事もなく壊してしまうね。
頼むからあんまり夢中にさせないでよ。

「……お前の作る雑煮は甘いからいらない。」
「あ、ひど!お雑煮はあんこが一番美味しいのに!」
「俺は出汁と醤油のが好きなの、あんこなんて邪道でショ!」
「邪道って、…じゃあもう作らない!」

これから死ぬかもしれないって時に、なんて下らない言い争い。
面の上からでも頬を膨らませているのが分かるくらい、名無しは不機嫌を全身で表して。

「いいよ、俺が作ってあげるから。」
「………え?」

表情なんて変わらない筈の面でも、こいつは呆れるくらい表情豊かだ。
こんな素直な暗部はどこを探してもお前くらいなものだよ。

どこを探しても、お前しかいないよ。

お前しかいない。

「一緒に食べよ?そんでお腹一杯になったら秘め始めして、一緒に寝正月でも楽しもうじゃないの。」
「カ…カシ………。」

名無しは少しだけ黙って、小さく鼻をすすって。

「…お餅は二つでお願いします。」

と、一言だけ呟いた。


多分もう、今年は去年に変わっただろう。

いい機会だから今年はお前との距離感を変えようか。
ま、とっくにそんな距離なんて無かったのかもしれないけどね。

雪は止んだ。

期は満ちた。

さあ、新しい年を共に迎えようか。





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