「カカシせーんせー!!草刈り終わったってばよー!!」
「もー!!変な本ばっかり読んでないでちょっとは手伝って下さいよー!!」
子供達のかしましい声が響く。
ひっきりなしに蝉が鳴く中、夏の日差しはどんどん強さを増していた。
「はいお疲れ。俺は報告書提出してくるから、今日はこれで解散ね。」
パタンと本を閉じ木陰から出れば、露出している肌を紫外線がじりじりと焦がす。
「あっちーなー。なぁカカシ先生、どっか涼しいとこでの任務とかねーの??」
「そういえば、今度の任務、草隠れの里まで囚人の護送じゃない?確かあっちの方はここより涼しいんじゃなかったかしら。」
サクラの言葉に、胸の奥がツキンと痛んだ。
名無しが草隠れの任務に就いてから、もう3度目の夏を迎えていた。
ナルト達と別れて、ひとり里を歩く。
この里は平和だ。
名無し、俺は今もこの里を守ってるよ。
上忍師になって初めての部下を持って、里の未来を守ろうと努力してるよ。
お前もそうでしょ?
そっちからの情報は本当に僅かだけれど、お前が今でもまだ戦っていることだけは分かってる。
俺にできることは、お前の帰るべきこの場所を守りながら、どうか無事であるようにと願うことだけ。
もどかしいけど、お前が必死に頑張っているなら俺も同じだけ頑張るよ。
お前と離れて3年経った今も、俺はお前を待ってる。
お前は待つなと言ったけど、恋人じゃない俺達にあの言葉は無効でしょ?
俺ね、恋人じゃないと言えない言葉を山ほど考えたんだ。
いや、本当はあの頃もずっと思ってた。言えなかったけどね。
名無しに言いたくて、でも言えなかった言葉を、今度こそ伝えたいんだ。
『他の男と二人きりで飲みに行くなよ。』
『記念日は一緒に過ごそう。』
『誕生日は一番におめでとうを言わせて。』
『二人で一緒に暮らそう。』
『好きだよ。』
『お前だけを愛してる。』
早く言わせて。
名無しにしか言えない。
名無しにだけ言いたい言葉だから。
だから、早く帰っておいで。
帰ってきたら、俺をお前の恋人にして。
俺はお前だけをずっと待ってるよ。
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