カカシ先生長編改造計画 | ナノ


数時間前、カカシさんと初めて喧嘩をした。
あの後すぐに家を出て行ってしまった彼は未だに帰ってきていない。

クリーム色のカーテンの隙間から、薄らと光が差し込んでいた。
時計は朝の7時を指していたが外はいつもよりずっと暗い。
聞こえてくる雨音は弱まったかと思うとまた激しさを増して、気は滅入る一方だった。

今どこにいるのだろう。
まさかこの雨に打たれてはいないだろうか。
けれどもし誰かに会いに行ったとしたなら、あんな夜中に誰の元へ……。
ベッドに入ったところで眠れるはずも無く、一晩中雨音を聞きながら考えることはカカシさんのことばかりだった。

『ゲンマと雅美ちゃんの間に何かあったならそれはそれで構わないから。ただ俺は君の身辺について知っておく義務があるんだよ』

何度も何度も頭の中で繰り返されるカカシさんの言葉に、胸が刺されるように痛む。
カカシさんにとって私という存在は、結局任務からの保護対象でしかなかった。

私を見つめる優しい瞳も、髪を撫でる大きくて温かい手も。
名前を呼ぶ柔らかな声も、時折見せる独占欲からくるような態度も。
彼の行動全てに特別なものを感じていた。
ただの護衛対象に対する態度ではないと、そう信じていた。
でも、それは全部自分の都合の良いようにとらえていただけの、思い上がった妄想に過ぎなかったのだろうか。
彼にとっては何てこともない、単なる任務の内だったのだろうか。

カカシさんが自分と同じ気持ちを抱いているとか、そんな奢った考えは無い。
それでも二人の間には任務とか、護衛とか、そんな義務以上の何かがあると思っていたかった。

(これから……どんな顔してカカシさんに会えばいいの?)

想像しただけで泣きそうになるから、もう何も考えたくない。
寝不足のせいでぼんやりする頭。
なにげなく時計に目をやれば、もう7時半を回っていた。

「仕事行く準備しなきゃ……」

カカシさんが出て行ってしまった部屋に、このまま一人でいたくない。
けれど帰ってきたカカシさんに会うのも怖かった。
仕事に行っている間に、どうにか頭を整理しなければ。
深い溜め息を吐いて、重い頭を振って。
小降りになった雨の中、ゆっくり歩いて待機所へと向かった。


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