カカシ先生長編改造計画 | ナノ


「雅美の男のタイプってどんな奴?」
「……へ?」

溜め息を吐きかけていたからだろう。
何の脈絡も無い、突然のゲンマからの質問に間の抜けた声が漏れる。
ぼんやりしていたせいもあり、一瞬言葉の意味が理解できなかった。

「あー、それ知りたい! 雅美ってどんな男が好きなわけ?」

アンコさんが興味津々といった様子で目を輝かせる姿を、やれやれと口では呆れながらもアスマさんと紅さんは愉快そうに眺めているだけ。
改めてカカシさんという味方がいないことを深刻に嘆いた。

「タイプって……、あんまり考えたことないんですけど」
「じゃ、今まで付き合った男はどんな奴だった?」

(…………)

流れるように返されるゲンマからの質問に、どう答えたらいいのか迷う。
出来る限りの平静を装ったはずなのに……さすがは一流の忍。
私の目がほんの少し泳いだのをアスマさんは見逃さなかった。

「……お前、もしかして男と付き合ったことねぇのか?」
「うっ……」

思わず言葉を詰まらせてしまった私を見て、その場にいる全員が驚きの声を上げる。

「マジでっ? その年でぇ!?」
「今時珍しいっていうか、貴重ね……」
「いやー、でもそれを聞いて俺は納得がいったぜ。他の女となんか違ぇと思ってたが、そーかそーか、なるほどな」

何なのだろうか、この一体感は。
必要以上に大きな皆のリアクションに、じわじわと顔が赤くなっていくのが分かった。

「そ、そんなに驚かなくたっていいじゃないですか!」
「あははは、ごめんごめん。いやー、あんたって本当に面白いわぁ……」

アンコさんの企んだような微笑に背筋をぞっとさせながら、気を落ち着かせるようにビールを喉の奥に流し込む。
ふう、と息をつくとビールジョッキがさっと取り上げられた。
何事かと目を見開けば、私のジョッキを持ったゲンマが不敵な笑みを見せる。

「雅美の初めての彼氏、俺が立候補してもいーか?」

この人は……。
よくもまあこんなにひょいひょい口説き文句が出てくるものだと、感心すら覚えてしまう。
初めて言葉を交わしてからというもの、会う度甘い言葉を吐き続けるゲンマ。
始めは恥ずかしくて顔を背けていたけれどいい加減慣れてきていた。
深い溜息をつきながらジョッキを取り返す。

「ゲンマは誰にでもそーゆうこと言ってそうで嫌」
「あ、ひでぇなー」

ケラケラと笑いながら眉を下げるゲンマにを見て、自然と笑みが零れた。
軽口を叩くゲンマだけれど、彼は私が本当に嫌がることはしない。
待機所で顔を合わせると、「慣れたか?」とか「たまにはゆっくり休めよ」なんて気遣う言葉をかけてくれる。
少しずつだけれど、ゲンマは私にとって心を許せる存在になっていた。

「雅美って顔に似合わず結構酒強いよな。女はちょっと弱いくらいが可愛いもんだぜ?」
「うるさいなー、だってここのビールすごくおいしいんだもん……それにゲンマに可愛いと思ってもらわなくても結構ですー!」

まるで小学生の喧嘩のような掛け合いは我ながら呆れる。
時折聞こえてくるカカシさん達の笑い声にまだ胸は痛むけれど、ゲンマのおかげで心は大分楽だった。


 

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