カカシ先生長編改造計画 | ナノ


「雅美ちゃん、大じょーぶ? 酔っちゃった?」

カカシさんの声に、違う場所へ飛んでいた意識が戻る。
ぼーっとしていた私を心配した彼が、目の前でパタパタと手を振っていた。

「大丈夫ですよ。まだまだ全然いけます!」
「そ? あんま無理しなーいでね」

ぐっと拳を握って見せると、カカシさんは目元を和らげてにっこりと笑う。
向けられる笑顔に「大好きだなぁ」なんてしみじみと思った時、後ろから甲高い女性の声が響いた。

「カカシさん、ゲンマさぁん! 私達もご一緒してもいいですかぁ?」

耳がキンとするような高く鼻にかかった声に、ここに居る6人が一斉に顔を向ける。
そこには少し派手目な3人の若いくの一達が、お酒の入ったグラスを持って立っていた。
彼女達の顔に薄っすら見覚えがある気がして一考し、すぐに理解する。
あまり目を合わせないようにしていたけれど、間違いない。
彼女達は私の陰口を堂々と言っていたカカシさんファンのくノ一だった。

「やーよ、あんた達五月蝿いんだもん」

アンコさんが眉間に皴を寄せて面倒くさそうに言い放つと、彼女達は、えぇー!という抗議の声を上げる。

「アンコ、お前もっと言い方があるだろうが……とはいえ、座る席もねぇしな。悪ぃが今日は遠慮してくれよ」

こんなことを思ったら失礼だとは知りつつ、ほっと胸を撫で下ろしてしまう。
しかしゲンマの言葉に安堵したのもつかの間。
一番前にいる長い茶髪をクルクルと巻いたくの一が、私にじろりと視線を移した。
整った顔立ちだからこそ、その瞳はより酷く冷たく感じて……ドクンと心臓が跳ねる。

「……一般人はいいのに私達は駄目なんですかぁ?」

私に向ける不満と敵意を隠そうともしない声色で、どこか蔑むように私を見るその女性。
込み上げた屈辱感に、思わずジョッキをぎゅっと握り締めて俯いた。

(なんなの……すごい感じ悪い。一般人は忍者と一緒に酒を飲んじゃいけない法律でもあるわけ?)

そんな法律があるとはさすがに思わないが、確かに忍と一般の人間には相容れない部分もあるのだろう。
もちろん全ての人々がでは無いけれど、忍の居住区と一般人のそれは微妙に区別されているから。
けれどこの世界の理を知らない私には、一般人と忍の間にある隔たりが理解できなかった。
だって今この場でお酒を飲み交わす彼らは、いつだって私を特別視すること無くただの友人として接してくれるから。

くだらない、と無視を決め込んだ紅さんとは対照的に、喧嘩売ってんの?なんて低い声で威嚇を始めてしまうアンコさん。
一触即発の沈黙を破ったのは、カカシさんの大袈裟な溜息だった。

「ハイハイ、俺が君達の席に行くから。それでいーでショ?」
「わぁ! カカシさんが一緒に呑んでくれるなんて嬉しいー!」

鼻にかかった猫なで声を上げたくの一達は、カカシさんの手を引いたかと思うと瞬く間に彼を連れていってしまった。
それはほんの数秒の出来事で、カカシさんを囲う楽しげな声はもう遠くにあって。
唖然としながら、私はその様子をただ目で追うことしかできなかった。

楽しかった気分は一転。
置いてけ堀をくらった私の気持ちは一気に落ち込んだ。
カカシさんが女性にもてるという事実は身を以て知っている。
けれど彼への想いを自覚してしまった今、他のそれを目の当たりにするのは辛い。

「まあまあ、ここは雅美を庇ってくれたカカシに感謝して任せておきましょう?」

紅さんの気遣いの言葉に、そうですね、とぎこちない愛想笑いしか返せなかった。
後方からはくの一達の笑い声が絶えず聞こえ、私の気分をどんどん暗くしていく。

大好きなビールの味も、もうよく分からなかった。


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