カカシ先生長編改造計画 | ナノ


6つの椅子が並ぶカウンター席に、4人掛けのテーブル席が5つ。
奥には掘りごたつ式のテーブルが2つ並び、繋げれば20人弱は入る座敷。
店の中を見渡せば、ほとんどの席は緑色の木の葉ベストを着た若者で埋まっている。
大衆居酒屋【酒酒屋】は、今日も任務を終えた忍達で賑わっていた。

「ビール6つとー、お汁粉ひとつねー!」

アンコさんの大声に対し、カウンターの奥の厨房からは「あいよー!」という威勢の良い返事が返って来る。
掘りごたつ式のテーブルは6人席だけれど、男性陣は皆体が大きいから狭くて足がぶつかったりして。
でもこの窮屈で賑やかな感じが、より一層楽しさを増幅させている気がした。

「この面子が揃うのも久しぶりよね」
「だな、最近は特に任務が立て込んでたしな」

紅さんの言葉に、おしぼりでガシガシと顔を拭くアスマさんが答える。

「いつものしがないメンバーの中に雅美がいるだけで、なんかこう…艶が出たって感じするよな!」
「……アンタ喧嘩売ってんの?」

さらっと毒を吐くゲンマを、横目で睨みつけたアンコさんの一言は殺気を含んでいて。
ハハハ、と思わず乾いた苦笑いが零れてしまう。

「まあまあ。ホラ、ビール来たから乾杯しヨ」

そんなふたりを宥めつつ、カカシさんは運ばれてきたジョッキを皆に回した。
カキン、とガラス同士がぶつかり合う涼しげな音。ふわりと揺れる白い泡。
アンコさんの乾杯の音頭と共に、上忍達との宴が始まった。

お汁粉をつまみに、目を見張る程のハイペースでジョッキを空けていくアンコさん。
アスマさんに寄りかかるように、色っぽくお酌する紅さん。
それを呆れ半分にからかうゲンマ。
口数は少なくとも、酔っ払い達に的確に突っ込みを入れているカカシさん。
どれだけ綱手様にこき使われたかを競うように話したり、部下であるナルト君達の失敗談や成長振りを自慢し合ったり。
話題が尽きることはなかった。

終始笑いが絶えない席の中、ふと思う。
自分が居た世界で、こんなに純粋に楽しい飲みの席があっただろうか。
だって誰一人として後ろ向きな発言をする人間がいないなんて、よく考えたら凄いことだ。

目の前で酒を煽りながら談笑するこの人達は、きっと数え切れない程の人を殺めてきたことだろう。
元の世界では重大な犯罪者となってしまう、この世界に生きる忍という存在。
そんな彼らから、自分の世界では失われつつあった人の温かみや繋がりを感じるのだから不思議だ。

里の未来を語る彼らの瞳は曇りひとつ無く輝き、そこには私欲や嘘などない。
仲間との絆を重んじ、第一に里の平和を考え、自らの犠牲をも省みない。
人が作ったこの紙の上の世界には、夢や理想が詰め込まれている気がした。


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