カカシ先生長編改造計画 | ナノ


『……やっぱ、雅美ちゃんはすごいな』
その言葉の意味を必死に考えるけれど、心臓の音が煩くて思考が働かない。

苦しそうに石碑を見つめていたカカシさんの瞳が、私に向けられた時にはもう柔らかい色を帯びていた。
ゆっくりと近づく彼に惹きつけられて、目が離せない。

木の葉の里をなでる秋の風が、強く吹き抜けた。
思わず目を瞑った私の手に温かなものが触れる。
まるで壊れものを扱うように繊細な仕草で、私の手を彼のそれが包んでいた。

「雅美ちゃん、もう一度ここで言うね」

それは神聖な響きを孕む誓い言。

「俺は、雅美ちゃんが無事に帰れるまで……命を懸けて、必ず君を守るよ」

ドクンと一際大きな音を立てて脈打つ心臓。
この世界へ来た日、カカシさんが私にくれた言葉。
あの時と同じ言葉が、今はこんなにも胸に響き、苦しくなるほどだった。

溢れ出す想いに堪らなくなって、彼の手を強く握り返す。

「わ…私、も……」

は、と浅くなってしまう呼吸に言葉がなかなか出てこなくてもどかしい。
雅美ちゃん?と優しく促される声に、深く息を吸った。

「私もカカシさんを守りたいです。カカシさんのように強くないし、何の特技も無いですけど、私のできる限りのことでカカシさんを守りたい……」

口にした途端、その想いは身体中に浸透する。

他人と一線を引いて付き合うのは、唯一無二の存在ができることを恐れているから。
無くしてしまった時の痛みを、嫌という程経験してきたから。
失う苦しみに耐えられないなら、元から何も欲しなければいいだけ……
そうやって今までずっと自分を守ってきたのだろう。大切なものを失う辛さから

こんなことを私が言うのは、おこがましいと分かっているけれど。
私にできることなんて、きっと歯痒いくらいに僅かだと分かっているけれど。
でも、どうしても伝えたかった。

熱くなる瞳を真っ直ぐ彼に向けて笑うと、彼の顔がどこか切なげに歪んだ気がした。

「……ありがとう」

手を握り合ったまま、カカシさんが一言だけそう落とす。
目元を弓なりにして優しく微笑んだ彼の表情を、きっと一生忘れることは無いだろう。

ねえ、カカシさん。
あなたに出会うまで、こんなに穏やかで愛おしい感情を知らなかったよ。
こんなに苦しくて焦がれる想いを想像したこともなかったよ。

誰かを守りたいと、そんな祈るような気持ちを抱くなんて。
あなたに出会うまでは……




 

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