カカシ先生長編改造計画 | ナノ


右の深い蒼黒の目と共に並び開かれた、不思議な文様の入った左の赤い目。
私は、この日初めてカカシさんの左目を見た。

「んー…やっぱ無理、か。日向の白眼なら何か見えるかもしれないけど……」

でもその為には雅美ちゃんの素性を明かさないわけにいかないし、と独り言みたいに呟くカカシさんの声も、まともに耳には入って来ない。
ギュルギュルと回転したことにも驚いたけれど、それよりも何よりもその赤い色があまりにも美しくて。

「……綺麗」

ほぅ、と溜め息交じりにそう呟けば、カカシさんは少し目を見開いて、その赤色をふっと細めた。

「変わってるね、雅美ちゃんは。普通は気味悪がるものでショ」
「えー、すごく綺麗なのに……」

柔らかく向けられた瞳に魅入られ、私はほとんど無意識に手を伸ばす。
なぞるように触れたのは、カカシさんの端整な顔に大きく刻まれた左頬の傷。

「……左目のこと、聞いてもいいですか?」

頬に添えた手は、微かに震えていた。
その手をそっと取り、握りしめたカカシさんが優しく私を見下ろす。
淡く降り注ぐ視線に震えは溶けて消えた。

「雅美ちゃん今日はお休みだよね?」
「は、はい……」
「じゃあごはん食べてからちょっと出かけよう。雅美ちゃんに会わせたい奴がいるんだ」

カカシさんが私に合わせたい人……そう一考してみたって全然予想もつかない。
けれど不安なんて欠片も無かった。


ハムとチーズのトーストと、トマトサラダに野菜スープ。
簡単な朝ごはんを二人で一緒に作って、二人で一緒にテーブルについて食べる。
いつもと同じ朝なのに、今朝は少しだけ違った。

心を開いてくれたなんて、そんな自惚れたことは思わない。
けれど昨日までの私達とはきっと違う、そう確信していた。

「ちょっとトースト焦げちゃいましたね」
「ははは、でも俺これくらい香ばしく焼いた方が好きなんだ」
「あ、私もです!」

明確に二人の関係を変えるような言葉が交わされたわけでは無くても、こうして穏やかな時間をあなたと過ごせるならそれでいい。
それだけで、ただ幸せだった。



柔らかな空気の中、にこやかに食事をする私達をじっと見つめる視線がひとつ。

「邪魔してすまぬが、もう戻っても良いか?」
「あ……」
「あー……ありがとパックン、ご苦労さま」




 

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