カカシ先生長編改造計画 | ナノ


翌日の仕事態度は我ながら酷いものだった。
報告書のチェックをしていてもイルカさんとお昼を食べていても、カカシさんの事が頭から離れない私は、気が付くと溜息ばかりをこぼしていた。

イルカさんに何度も「大丈夫ですか?」と心配そうに聞かれてしまう始末。
こんなことではいけないと、気を引き締めて仕事にとりかかろうと思った時だった。

「雅美―!ちょっと来てー!!」

待機所に響いた大きな声。
何事かと急いで受付の方に行くとそこにいたのはアンコさんで。
アンコさんは私の姿を見つけると、満面の笑顔を浮かべて千切れんばかりにブンブンと手を振った。

「おつかれー、雅美!今日この後、紅と飲みに行かない??あとちょっとで仕事も終わりでしょ?」
「い、行きます!!」

思わずどもってしまうくらいの勢いで私は即答した。
カカシさんのいない夜は一人で家にいても気が滅入ってしまうだけだし、この世界でまだ友達と呼べる存在のいない私にとって彼女の誘いは素直に嬉しい。

途端に表情の明るくなった現金な私を見て、イルカさんが眉尻を下げて笑っていた。



「おつかれー!」

アンコさんの乾杯の音頭で、カキンと小気味いい音をたてる3つのビールジョッキ。
相変わらず甘ったるいデザートをつまみに飲むアンコさんと、それを呆れた目で見る紅さん。
以前も思ったけど、飲み屋にあんみつやら団子やらのメニューが豊富にあることが不思議で仕方ない。
何気なくそんな疑問を口にすれば、私がメニューに加えさせてやったのだ、とアンコさんは得意げに教えてくれた。
年齢が近いこともあり、私が2人と打ち解けるのにそう時間はかからなかった。

「ねー、雅美はさー、カカシと本当に付き合ってないわけ〜?」
「またその話ですかー?それ何回目ですか、もう……」

すっかり酔っ払って目の据わっているアンコさんに苦笑いしてしまう。
酒々屋に来てまだ小一時間程しか経っていないのに、もう同じ質問を5回はされただろう。

「だってカカシの奴、あんたが来てから人が変わったみたいなんだもん!ぜーったい雅美が原因だって、ね、紅?」
「……あたしに振らないでよ」

紅さんは一瞬迷惑そうな顔をしたけれど、頬杖をついて少し考えるようにして、そうね、と口を開いた。

「確かに最近のカカシはちょっと変わったかもしれないわね」
「あの、変わったってどこらへんがでしょうか?」

過去の彼を知らない私としては、カカシさんがどう変わったのか興味がある。
尋ねてみればアンコさんがビールジョッキをドン、と置いて身を乗り出した。

「女関係に決まってるでしょ!あの女にだらしないカカシが、もー雅美以外眼中ないって感じじゃない!?」
「そ、そんなこと……」

ない、と言おうとしてふと思い返してみる。
確かにこれまで一緒に暮らしていて、カカシさんに女の影を感じたことはなかった。
あれだけ熱烈なファンがいるくらいなのだから、もてていることは間違いないのに。

「それって、私がいるせいで他の女の人と会えないんじゃ……、そうだとしたらカカシさんに凄く申し訳ないです……」
「別に雅美が申し訳なく思う必要なんて何もないでしょう。カカシにそこまで大事な女がいないってだけのことよ」

少し上目遣いで私を見る紅さんが妙に色っぽくて、女同士なのにドキッとしてしまう。
ふふっと妖艶に微笑みながら紅さんは言葉を続ける。

「そこらの女よりよっぽどあなたが大事なのね、カカシは」
「大事にしてもらってはいますけど、綱手様から聞いている通りそれはカカシさんの任務ですから」

自分で口にしたセリフに、胸がツキンと針に刺されたように痛む。どうして傷ついているのか自分自身分からなかった。
事実を言ったまでのことなのに。

思わず俯いてしまった私に、二人はそれ以上聞こうとはしなかった。
私の事情について詮索しないようにと言われているのか、それとも任務について深く掘り下げたりしないのが忍としてのルールなのか。
何にしても今の私にはそれがありがたかった。


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