カカシ先生長編改造計画 | ナノ


「わざわざ送ってくれなくても……」
「まーまー、たまにはいいじゃない」

待機所はアパートから徒歩10分程の距離。散々断った私に対してカカシさんは送ると言って聞かなかった。
気持ちは嬉しいけれど、いかんせん周りの視線が気になって仕方がない。
あの4人組みのくの一を刺激するようなことはなるべくならば避けたいのに。
しかし隣を歩くカカシさんは片方だけ見えている目をニコニコと細めているから、私は苦笑しながら溜め息を吐くことしかできなかった。

「せっかくのお休みなんですから、カカシさんもっとゆっくり寝てたら良かったのに」
「んー、今夜からまた任務だからね、ちょっとでも一緒にいたいなーと思ってさ」

さらりと言った彼の言葉に驚いて思わず足が止まる。

「え!今夜からまたですか!?」
「ん、今ちょっと里内で気になることがあってね」
「そう、ですか……」

あからさまに暗くなってしまった私の頭を、カカシさんが柔らかく撫でた。
ちょっとでも一緒にいたい、そう言ってくれる彼は私の不安な気持ちに気付いているのだろう。
こういうさり気無い優しさをカカシさんはいつだって私に向けてくれるからこそ、余計に彼のいない日常が寂しくて仕方なかった。

さらりと頬を撫でていった涼やかな朝の風。
また一人で過ごす夜が続くのかと思うと、爽やかな秋晴れの空とは裏腹に私の心は沈む。

(……今日はできるだけ早く帰ろう)

どうかカカシさんが無事であるように、そう祈るしかできないことが本当に歯痒かった。


里で気になることがあると言ったカカシさんの言葉通り、待機所は俄かにざわついていた。
報告書の処理に追われ、少しでも早く帰りたいと思うこんな日に限って普段よりも業務が長引いてしまう。そうして私が帰宅した時にはもうカカシさんは任務へと向かう準備を済ませたところだった。
せめてちゃんと見送りがしたいと、玄関まで彼の後ろを付いていく。

「今回は明日には帰って来れると思うけど、恐らく夜中になるだろうから寝てなさいね」

玄関で靴を履きながら微笑むカカシさんに、私は少し遅れて「はい」とだけ返事をした。
待機所で何度も確認した任務表。そこにカカシさんの今夜の任務はやはり記載されていなかった。
暗部の任務だと、そう確信して胸が締め付けられる。

無意識に俯いてしまっていた私の頭に、ぽん、と軽く置かれた手のひら。
顔を上げれば、私と同じ目線になるように腰を落としたカカシさんが、口布を下げて柔らかな微笑みを向けていた。

……この人の笑顔はどうしてこんなにも安心するのだろう。

「すーぐ帰るヨ。大じょーぶだから、いい子で待ってて?」

ふっと細められた優しい眼と、低く響く甘い声。
ドキン、と跳ねた心臓を誤魔化すように私も笑みを返す。

「じゃ、ちょいいってくるからネ」
「はい、いってらっしゃい」

私の頭をくしゃくしゃと撫でて、カカシさんは夜の闇へと姿を消した。



一人きりの静かな夜。

カカシさんが作っていてくれた肉豆腐を食べて、いつもよりゆっくりとお風呂へ浸かり、少しだけ本を読んでから布団へ入る。
明日もあるから早く眠りたいのに、ただ時間ばかりが過ぎていく。

コチコチと時計の針の音だけが響く部屋の中で思う。
カカシさんがこの家にいないだけでまるで世界でたった一人きりになってしまったような錯覚に陥るのはなぜなのだろうか、と。

「はぁ……」

深いため息をついて、部屋から毛布だけを持って向かうのは今主のいない彼の部屋。

カカシさんのベッドの脇へ座り、毛布に包まって目を閉じる。
自分の行動の幼さに苦笑しながら、微かに感じる彼の香りに安心感を覚えていた。


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