カカシ先生長編改造計画 | ナノ


トーストの焼ける匂いとコーヒーの香ばしい香り。
ふわりと眠りの淵から意識が戻ってくる感覚。
こんな穏やかで目覚めの良い朝を迎えるのは、何だかとても久しぶりな気がした。

働かない頭もそのままに布団の温もりに身を任せていると、フッと視界に影が落ちる。

「おーい、そろそろ起きないと遅刻しちゃうよー?」
「!??」

不意に頭の上から聞こえてきた間延びした声に一瞬で覚醒した。

「カ、カ、カカシさん!?なんで私の部屋、に――…あ……」

言葉の途中でここがカカシさんのベッドの上だという事実に気が付く。
昨晩カカシさんの部屋に無断で入った上、そのまま寝てしまったことを思いだして顔に体中の血が集った。

「ごめんなさいっ!えっと、私……その…」

とりあえず咄嗟に謝ったけれど、事の経緯をどう説明すればいいのか考えてしまう。
うなされていたから心配で、なんてきっと余計な御世話だろうし勝手に部屋に入った理由になどならない。
口籠ってしまった私の頭を軽く撫でたカカシさんが、にっこりと目を細めた。

「朝一番に雅美ちゃんの可愛い寝顔が見れてうれしかったよ」

普段と変わらない穏やかな声に、彼が怒っていないのだと安心する。
ほっと溜息を吐いて、私も笑顔を返した。

「さ、支度しといで、すぐ朝ごはん食べれるからネ」
「あ、すみません!私、カカシさんにやらせちゃって……」
「いーのいーの、俺今日休みだし。いつもやってもらっちゃってるからさ」

コーヒーでいいよね、そう言って部屋を出て行ったカカシさんの背中をぼんやりと見送る。
いつもの彼だった。
どこまでも優しく甘く、いつだって自分を守ってくれるカカシさん。
けれどそんな彼の内側には、どうしようもない暗い部分があるのだと知ってしまった。

(カカシさん……)

苦しげな声が耳から離れない。冷えた手のひらの感触が消えない。
彼の心に巣食う闇は忍ではない私には想像し得ないもので、自分にできることなど何もないことなど分かっている。
けれど目の前で悪夢に苦しむカカシさんを放ってなどおけなかった。
あの時彼の傍を離れることなんてとてもできなかった。

何かしてあげられたらいいのに、彼の為に。
ほんの些細なことだって構わないから、カカシさんの苦しみを和らげてあげたい。

(……どうしてこんなに胸がざわつくんだろう)

心の奥に生まれた小さな感情は気づかない程ゆっくりと。
静かに湧き出る水のように少しずつ胸の中を満たそうとしていた。


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