カカシ先生長編改造計画 | ナノ


喉の渇きを覚え、意識が眠りの中から現実へと戻る。
瞼の裏に感じる朝日の光に曖昧だった感覚が徐々にその輪郭を取り戻す。
薄っすらと目を開けて、クリアになり始めていた思考がぴたりと止まった。

「…………え?」

数センチ先にあったのは雅美ちゃんの寝顔。
ベッドの枕元に突っ伏すようにして寝ている彼女の姿を見て一気に眠気が飛んだ。

何故ここに彼女がいるのかとか、いつの間にこの部屋に来たのだろうかとか、そんな考えがぐるぐると頭の中を廻る。
ふと気づけば俺の手を彼女はしっかりと握っていて、思わず苦笑してしまう。
任務後で疲労していたとはいえ、雅美ちゃんと一緒に暮らしているおかげですっかり彼女の気配に鈍感になっていた。

(雅美ちゃんが敵だったらとっくに殺されてるな、俺……)

どんな夢を見ているのだろうか、眉間に少しだけ皺を寄せて眠る彼女の頭をさらりと撫でる。
こうして雅美ちゃんの柔らかい髪に触れるのは本当に久々な気がした。

(何でまた俺の部屋で寝てるんだろうねぇ、この子は)

今まで自分に対して甘えるような素振りを見せなかった彼女からは考えにくい行動だ。
ただ一人にされたことが寂しかっただけなのか、それとも他に何か理由があったのか。

「ねーパックン、なんで雅美ちゃんここで寝てるの?」
「それは雅美に直接聞けばよかろう」
「……ケチ」

主よりも雅美ちゃんの意志を尊重するなんて、すっかり彼女になついてしまったようで何よりだ。

(ま、異世界に一人きりなわけだし、過度に不安になってもおかしくはないか)

というか雅美ちゃんよりも問うべきなのは自分自身だ。
他人が真横で寝ている状況でこんなにも安眠してしまっていたことが信じられない。
忍として生きてきた30年近いこの人生の中でこんな経験は初めてだった。

彼女と出会ってからというもの、自分とは縁の遠かった【感情】に振り回される日々。
雅美ちゃんという存在の大きさと自分自身の変化に、俺は少し恐怖すら覚えていた。

すうすうと寝息を立てる彼女を見つめていると、その目元にうっすらと涙の痕があることに気付く。
この子は一体どんな気持ちで俺の傍らにいたのだろう、知りたくもあり同時に知ることが酷く躊躇われた。

自分の手を握りしめたまま眠る彼女を見て湧き上がるこの感情をなんと呼ぶのか。
その答えはたぶんもう分かっていた。
けれど同時に、その感情を認めて受け入れることなどできないことも分かっている。

だってその先には残酷な結果しか待ち受けていない。
それは紛れもない事実で、俺達の現実なのだから。


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