カカシ先生長編改造計画 | ナノ


上忍待機室の奥にある受付所は、今日も忙しかった。
アカデミーの講師を掛け持つイルカさんも、他の事務員達も総出で報告書の処理に追われている。

護衛や行方不明者の捜索等の依頼を中心に、近頃高クラスの依頼が増えているようだった。

何かあったのだろうか、と雑務に追われながら掲示板を眺める。
上忍待機室の壁には現在誰が何の任務についているか掲示されていて、そのボードに記載された数多い任務を見て疑問を覚えた。

(カカシさんの任務が無い……?)

「少し休憩しませんか?」

とん、と置かれた湯呑に、意識が現実に戻る。

「あ…ありがとうございます。」
「いえいえ。」
「あの…イルカさん、ちょっとお聞きしたいんですけど…。」
「はいはい、なんです?」
「もしかしたらあんまり他言してはいけないことなのかもしれないですが、カカシさん昨日の夜から任務に出たはずなのに掲示板に何も書かれていなくて。それってやっぱり何か意味があるんですか?」

あぁ、と言いながらイルカさんは掲示板に目をやると、少し声のトーンを落とした。

「それは恐らく暗部の仕事だからだと思いますよ。暗部の任務内容は極秘ですから、掲示はしないし報告書もここには上がって来ないんです。」
「暗部??カカシさんが暗部に所属してたのは昔のことだって聞いたんですけど。」
「たぶん状況によって掛け持ちしているんだと思いますよ。カカシさん程の忍はなかなか居ませんからね。」

(暗部の任務…。)

聞いた事実に胸がぎゅっと締め付けられるような不安感に襲われる。
どきどきと速まる鼓動に、思わず自分の手を握りしめていた。

暗殺戦術特殊部隊なんて物騒な正式名である暗部の任務が、危険でないわけがないのだから。



待機所からの帰り道、その足取りは重い。
カカシさんが暗部の任務についていると知ってから、私の胸の鼓動は早鐘を打ったままだった。

大丈夫、カカシさんは【NARUTO】でも重要な役なはず。
彼の身に何か起こるわけがない、そう自分自身に言い聞かせる。

(ああ…、何でもっとちゃんとNARUTO読んでおかなかったんだろう…!)

今更そんなことを後悔したところで何の意味もないけれど。

俯いていた顔を上げて、夕暮れに染まった街を眺めた。
公園を駆け回る子供達の姿、商店街を通れば聞こえる主婦たちの笑い声。
日が落ちると灯るたくさんの家の明かり。

ここで生活していると忘れそうになる、今いる世界が漫画の中の世界なのだという事実。

人の生活や交流、出会いや別れ、その全ては作られたお話の中のこと。
しかし、もうとっくにそんな風には考えられなくなっていた。
この里に生きる人間は、私の中で確かな存在になっていたから。

ゆっくりと沈んでいく夕日を見ていると、胸が苦しくて、切なくて。
そして、カカシさんを思えば涙が込み上げて。

彼が任務に出てまだ一日も経っていないというのにこんなに情緒不安定な自分に、自分自身が一番戸惑っていた。
いつの間にかカカシさんは、私にとってこんなにも大きく強い存在になっていたのだ。

どうか無事で。
祈ることしかできない歯痒さに押しつぶされてしまいそうになりながら、それでも幾度となく心の中で祈る。

どうか…。


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