カカシさんが席を立ってすぐに、ゲンマが申し訳なさそうに口を開いた。
「悪かったな雅美、嫌な思いさせちまって…。」
彼の表情は、しゅん、という効果音がぴったりで思わず笑ってしまう。
「気にしないで、ゲンマは悪くないよ。」
笑顔で答えた私に、アスマさん達が少しだけ面喰っていたのが分かった。
ゲンマは悪くない。
たぶん、誰が悪いわけでも無いと思った。
カカシさんが私に対して過保護になるのは当然で、それを周囲が理解できないのも当然だ。
だって私がどういう立場なのかを周りは知らないのだから。
色々な問題はあるけれど、私の気持ちはただひとつだった。
「ゲンマ、私ね、カカシさんが嫌がることしたくないの。
それがどんなに理不尽でも私はカカシさんの思う通りにしたい。
カカシさんを信用した時、そう決めたの。そのせいで、ゲンマに迷惑をかけてしまってごめんね。」
あの日、カカシさんの腕の中で泣き崩れた日。
私はカカシさんに全てを委ねることを決めた。
命を懸けて守ると言ってくれたから。
普段飄々としてやる気のなさそうなカカシさんが、真剣な思いを伝えてくれたから。
だから私も彼を全身全霊で信じたいんだ。
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