まぁ飲んで飲んで、と雅美ちゃんにどんどんビールを進めるアンコ。
「こらこら、あんまり雅美ちゃんに無理させないでよ。」
「カカシー、あんた過保護ねー!父親か!」
飛んできたおしぼりを受け止めてため息を吐く。
すっかり出来上がってしまっているアンコに何を言っても無駄だった。
心配する俺をよそに彼女はおいしそうにビールを飲んでいて。
アンコや紅と楽しそうに話している彼女は、少し酔っているようでほんのり顔を赤くしていた。
(ま、雅美ちゃん楽しんでるみたいだからいいけどね。)
「随分優しい目してるじゃねーか、カカシよぉ。」
カチン、と陶器のぶつかる音。
俺のお猪口に酒を注ぎながらにやにやしているアスマを軽く睨んで、注がれた酒を一気に飲み干した。
(なんでアスマまでナルトと同じこと言うかねぇ。)
「確かに雅美は今までにいないタイプっつーか、雰囲気が違うっつーか。」
「そうゆーんじゃないんだって、雅美ちゃんは。」
「里一番の技師と歌われるお前も、惚れた女の前ではただの男ってわけか。」
「…アスマ、人の話聞いてる?」
「なんでもないなら邪魔せんでくださいよ、カカシさん。」
口を挟んできたゲンマに、視線をやることもせずに殺気だけを向ける。
「だーめ。雅美ちゃんに手ぇ出したら殺すよ。」
上忍の放つ殺気に、ゲンマは全く怯むことなく食い下がる。
こいつのこういう事に対する姿勢は若干尊敬すら覚えてしまう。
「恋人ってわけじゃないのに、何でそんな殺気出してまで束縛するんですか?
そんな権利ないはずですけどね。」
「束縛なんてしてない。」
「束縛でしょう、完璧に。」
一向に引こうとしないゲンマに苛立ちが募って、それはたぶん言われていることが的を射ているからだと分かっていた。
けれど絶対に譲れないことだけは確かで、俺はそんな頑なな自分自身に疑問すら抱いていなかった。
「オイオイお前ら、雅美が困ってんのがわかんねーのか?」
たばこの煙と呆れたようなアスマの声。
ふと我に返って目の前に視線を向けると、雅美ちゃんは泣きそうな顔をして俺を見ていた。
なんて学習能力が皆無なのだろうか。
これではイルカ先生の時と同じではないか。
「…悪い、ちょっと頭冷やしてくるわ…。」
俺はまた、彼女にあんな顔をさせてしまった。
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