カカシ先生長編改造計画 | ナノ


初めて歩く木の葉の里は、どこか昔の日本のような懐かさに包まれた、情緒溢れる町並みだった。
見たことのない広告や看板がいっぱいで、ついつい眼を奪われてしまう。
書店に平積みに置かれる本が気になって、歩きつつもしつこく眺めていると、
突然くいっと腕を引かれた。
びっくりして隣に立つカカシさんを見上げれば、困ったような笑みを浮かべている。

「前見てないと、ぶつかっちゃうヨ?」

え、と前を向けば指摘された通り、目の前に酒酒屋と書かれた大きな提灯が迫っていた。

「ご、ごめんなさい。…ここって、飲み屋さんなんですか?」

まだ明りが灯っていない赤い提灯は、恐らく私の身長くらいはあるだろう。

「うん。俺たち上忍の行きつけ。」
「へぇー。忍者さんも飲みに行ったりするんですね。」

そりゃーねぇ、と言いながら私の腕を軽く引いて、歩くように促すカカシさん。
忍の里だなんてどれだけ殺伐とした場所なのかと思っていたら、
意外と人間味のある平和そうな町で安心した。

そんなに広くないのだろうこの里の人々は皆仲が良く、活気に溢れている。
八百屋さんの奥さんに、葡萄が甘いよと勧められては立ち止まって、
魚屋さんのおじさんが、良いサンマが入ったよと大声で叫べば立ち止まって、
なかなか先へ進めないカカシさんと私。

ひとりひとりに丁寧に対応して、参ったな、なんて眉尻を下げて笑うカカシさん。
こんな姿を見ていると、とてもじゃないけど友人が言うような凄い忍者には見えなかった。

そうしてしばらく町を歩いていると、前方に聳え立つように現れた大きな崖。

「わ!あ、あれ何ですか??」

思わず興奮してその崖を指さした。
崖に掘られた人の顔の彫刻は、まるで彼らが里全体を見渡している様に見える。

「あれは顔岩っていって、歴代の火影の顔が彫ってあるんだヨ。
 左から初代、二代目、三代目、四代目…、そして五代目の綱手様。」
「へぇー、なんだか壮大ですね……。」
「火影は国を代表する忍だからネ。どの火影も皆伝説と言われた忍だよ。」

耳に届いたのは、とても優しい声。
思わず隣を見上げると、カカシさんはどこか懐かしそうに目を細めている。
その横顔がとても印象的で、何故か目が離せなかった。



どれくらい歩いただろう。
カカシさんは、とても丁寧に町を案内してくれた。

ここの餡蜜はおいしいらしいとか、この店の団子は大人気だとか。
でもカカシさん自身は甘いものが苦手で食べたことがないと聞いて笑ってしまった。

殆ど知らない男の人と二人きりだというのに、私はこの時間を心地よく感じている。
自分でも信じられないけど、私はいつの間にかすっかりカカシさんに心を許していた。

カカシののんびりとした穏やかな雰囲気や、優しい話し方が私を安心させる。
低く響く、少しだけ鼻にかかる甘い声が私の心を落ち着かせる。

抜けるような初秋の空。
時折吹く涼やかな風。

もう少しだけこのままカカシさんとこの街を歩いていたい。
そう思っていた。

  
                       
    

 

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