ごくりと唾を飲み込み、私は口を開いた。
「私がいた世界は、こことは別の世界なのだと思います。」
口に出してみると、その非現実さに思わず苦笑が漏れそうになる。
「「別の世界??」」
二人の声が重なった。
ゴホンと咳払いをして金髪女性が続けろと促す。
「私の世界ではこの世界を描いた漫画があって、
…私は読んだことがないのですが、友人からよく話を聞かされていました。」
「「まんが!!??」」
また二人の声が重なる。
呆気にとられた顔をする二人を見て、当然の反応だなと思った。
(頭がオカシイと思われただろうか。)
うん、思われたに決まってる。
頭の中で自問自答しながら二人の言葉を待つ。
「ちなみにその漫画、どーゆう内容なわけ?」
カカシ先生(仮)が、ポカンと口を開けたままの金髪女性の変わりに問う。
「えっと、実はあんまり知らないのですが…。
確か、ナルトっていう忍者が主役で、
すったもんだを乗り越えて火影になるんだってばよっていう話だって聞きました。」
友人から聞いたナルトの内容をそのまま伝えた。
「その口癖、ナルトを知っているのか?」
ポカンとしていた金髪女性は、
ナルトという言葉を聞いてハッと我に返ったようだった。
私は自分の記憶の糸を必死に手繰り寄せて話しを続ける。
「覚えているのは、ナルトと...、サスケ!あと、女の子もいたような…。
あ、シカ、シカ…なんとかっていうめんどくさがりの男の子が。」
「シカマルのことだネ。」
「あ、そうです!シカマル。
それと、一番知っているのは、カカシ先生っていう忍者のことです。」
「え、オレ??」
自分を指さして、ちょっと驚いた様子を見せた彼。
(この人やっぱりカカシ先生なんだ……。由佳さん、絵、上手だなぁ・・・。)
由佳さんにも見せてあげたい、なんて悠長なことを考えながら話を続ける。
「カカシ先生はナルト達の先生で、とにかくすごく強い忍者で、
なんとか眼っていう特別な眼を片方持ってるって。」
「写輪眼。」
「あ、それです。すごく強いのに、普段はのほほんとしていて、
いつも如何わしい本を読んでるって言っていました。
何でしたっけ・・・、イチャイチャ・・・イチャイチャ・・・」
「イチャイチャパラダイス。」
「……本当に変なタイトルですね。」
「今はイチャイチャタクティクスだけどネ。
……大体正解だけど、なんてゆーか恐ろしいほど曖昧な記憶だネ。」
「あ、あんまり興味がなかったものですから。すみません。」
この人は友人が大好きだと言っていた人。
確かに、8割方顔を隠しているのに端整な顔立ちであることが分かる。
優しくて、強くて、誰よりも仲間思いな人だと聞いた。
私には胡散臭い人にしか見えないけれど、
できれば由佳さんの言った通りで在ってほしい。
半分祈るような気持ちだった。
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