カカシ先生長編改造計画 | ナノ


何が起こったのか分からないまま、カカシさんに言われるがままただ立ち尽くす。
曇っているのだろうか。
月明かりもない世界は、目を閉じても開けていても全く変わらない程の闇だった。

カカシさんが私を降ろしたかと思うと、すぐにバチバチという轟音が響き渡る。
彼の右手は、青白い雷のような閃光を放っていた。
その光に導かれて顔を上げて、息を飲む。
青い光に照らされて輪郭を現したのは、見たこともない程大きな桜の木だった。

そのあまりの美しさに、息をすることも忘れて魅入ってしまう。
ふわりと風が吹けば、薄桃色の花弁と共に朝降っていた雨の粒が舞って。
キラキラと淡青の光に照らされたその光景は、まるで現実感が無い。
この世のものとは思えぬ程の美しさに、ぞくりと震える程の恐怖すら覚えた。

「きれい……、怖いくらい……」
「遅れ桜っていってね、木の葉の里の名物なんだ。どうしても雅美ちゃんに見せたくて……強引にしてごめん」

青白い光の下で、眉尻を下げて困ったように笑ったカカシさん。
胸が苦しいくらいに締め付けられて、鼻の奥がツンと痛んだ。

一体何を考えていたんだろう。
自分勝手な嫉妬心から彼を責めたりして、馬鹿だった。
彼に恋をした私は、生まれた欲から目が曇ってしまっていたのだ。
だってカカシさんは、こんなにも自分に対して優しさを、思いやりを示してくれている。
過ぎるほどの温かい想いを……ずっと前からもらっていたのに。

「ごめんなさい、カカシさん。……本当にごめんなさい」

どんな形であっても、カカシさんが私に向けてくれている愛情は本物だから。
それだけでいい。
それだけで心から幸せだった。

「俺も、ごめん……。雅美ちゃん、俺はね――…」

何かを言いかけ、それを飲み込むように唇を結んだカカシさん。
ふ、と短く息を吐き、私を真っ直ぐに見つめた。

「俺は雅美ちゃんのことがすごく大切だよ。……お願い、それだけは忘れないで?」
「っ……、はい…、はい……!」


カカシさんが飲み込んだその言葉を、私は知っている気がした。
伝えたいことも、伝えたくないことも、全部全部この花弁と一緒に舞い散ってしまえばいいのに。

彼の手から放たれる光が、徐々に弱まっていく。
終わってしまう、夢みたいな夜。
儚く美しい景色の中で、私は瞬きすらできないでいた。


 

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