カカシ先生長編改造計画 | ナノ


今日の任務は、里外周辺の森の見回りだった。
……名目上は。
内通者の問題があってから、しばらくは警備を強化することになっていた。
何事もなければ簡単で単調な任務だが、反面何が起こるか分からない為油断はできない。
集中しなければと思いつつも、意識は全く別の場所へ飛んでしまっていた。

「ちょっと……カカシ先生どうしちゃったのよ?」
「なーんか超暗いってばよ……」
「聞いてみればいいよ。友達が落ち込んでいる時は優しく悩みを聞いてあげると良い、と本に書いてあったし」
「や、でもカカシ先生は友達じゃねぇし」
「てゆーか、あんなあからさまに落ち込んでると、逆に声かけづらいわよねぇ……」

(全部聞こえてるんですけど)

いっちょまえに気を使っているのだろうか、やり方は下手くそにも程があるけれど。
教え子に気を使われるなんて、本当に情けなくていっそ笑える。
そんな微妙な空気のまま時間は過ぎていって。
里外の森を一回りして、『あん』と書かれた里の大門の前に着く頃にはもう日が落ちかけていた。

「じゃ、俺は報告書を提出してくるから、お前らはこれで解散な」

部下達に解散を告げ、瞬身の印を結ぼうとした時――ぶわっと強い風が吹き抜けた。
その風に乗って、たくさんの小さい薄桃色の花びらが舞う。
花吹雪とはまさにこのこと、と思わず目を奪われた。

「わぁ、きれい!! もう遅れ桜が満開になる頃なのね!」
「遅れ桜……」

サクラの視線の先、風の吹いてくる方を見上げる。
そこには、見事なまでに花をつけた一本の桜の木が堂々と立っていた。
まさに今が満開なようで、風が吹くたびに美しい花弁を散らして魅せている。

雅美ちゃんに見せたい。

そう思ったと同時に俺の脚は走り出していた。
頬に当たる風の湿り気から、明日が雨であることが分かる。
今を逃せば恐らく、満開の花弁は雨と風で散ってしまうだろう。
すれ違いにならないように注意しながら、家から待機所のまでの道のりを隈なく探し……まだ待機所から幾らも離れていない所で雅美ちゃんの姿を見つけた。

俺が思っている以上に、雅美ちゃんは怒っているようだった。
いつも真っ直ぐ俺を見つめる瞳が向けられることは無く、投げられる言葉は酷く冷たかった。
全身で俺を拒否する雅美ちゃんに、一瞬怯む。
けれど俺は彼女の体を強引に抱えて走った。

どうしても見せたかった。
――あの桜を。


桜の木の下に着くころにはとっくに日が沈んでしまっていた。
辺りは明かり一つない森の中、忍でない雅美ちゃんにはまるで何も見えていないようだ。
突然抱えられて連れてこられた闇の中で、不安げに瞳を揺らしている。

「カ、カカシさん……」
「今降ろすから、ちょっとじっとしててね」

言われたとおりにじっとしている雅美ちゃんの頭を撫でて、彼女から少しだけ距離を取る。
丑、卯、申……結んだ印に発動し、発光する青いチャクラの光。
目を丸くしている彼女の視線を誘うように、俺は腕を高く、高く掲げた。



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