カカシ先生長編改造計画 | ナノ


帰らなければ。そう思っているのに全然足が動いてくれない。
立ち尽くしたままでいると、シュッと風を切るような音が夜空へと響いた。
その音の主が【彼】だと、なぜか分かってしまう。
だから突然掴まれた腕に私が驚くことは無かった。
「雅美ちゃん! 良かった、ちょっと見せたいものがあるんだ」

ゆっくりと顔を上げると、そこには珍しく息を切らしたカカシさんが立っていて。
肩を上下させて笑う彼の姿が、なんだかとても憎らしく見えて。
嫉妬から来るこの怒りにも似た感情を、カカシさんにぶつけるなんて間違っている。
けれどどうしても普通に接することができそうにない。
自分の感情を抑えることができなかった。

「腕、痛いです……」
「あ……、ご、ごめん」

わざとらしく取った冷たい態度に、彼は少し悲しそうな顔を見せて手を離した。
カカシさんにそんな顔をさせたいわけじゃないのに……、本当は素直な気持ちを打ち明けて仲直りしたいのに……。
さっきの彼女の言葉や態度が頭をチラついて、気を抜いたら大声で泣いてしまいそうで。
もう早く帰って一人になりたかった。

「あの……、今日は疲れてるから」
「……そっか」

俯くカカシさんを見ているのが辛くて、振り切るように歩き出した。
こんな風になってしまって、やっと動いてくれた足。
カカシさんの傍を離れたことで溢れ出そうになる涙を、ぐっと堪える。
すると、突然ふわっと体が重力を失くした。

「じゃ、雅美ちゃんは俺に捕まってるだけでいいから」
「えっ! ちょ、カカシさ――ひゃあぁ!!」

予想もしていなかった展開にフリーズした思考。
私の叫び声は、木の葉の夜空へ吸い込まれるように消えていった。


 


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