カカシ先生長編改造計画 | ナノ


彼女が現れた状況、里で匿うことになった経緯、過去の訪問者の存在、消えない胸の術式。
そして五代目には報告をしていない特殊な力。
雅美ちゃんの全てを、俺は隠すことなくゲンマに告げる。
ゲンマは俺の話をただ黙って聞いて、最後に「なるほどね」と微かに笑って呟いた。

「できれば【力】のことを五代目には黙っていてほしい。それが正しい判断かと問われると自信を持って頷けないけれど、雅美ちゃんを少しでも危険な目に合わせたくないんだ」
「いや、……たぶん俺でもそうすると思いますよ」

ゲンマが彼女に対して恋情を抱いている事実は、こうなってしまった今では好都合な部分もある。
恐らく何の感情も持っていなければ、彼女の力について黙っていることなどしないだろう。
雅美ちゃんの身の安全を第一に考えてもらえること、それは素直にありがたかった。

「異世界、ね……。はは、俺達が漫画のキャラとか言われてもピンとこねぇな」

カラカラと笑ったゲンマは、咥えていた千本を指先で遊ぶように回す。
その手甲からぽたりと地面に落ちた水の粒に、いつの間にか雨が降っていたのだと知った。

「カカシさんが雅美に手ぇ出さない理由、やっと分かりましたよ。そりゃ一筋縄じゃいきませんよね」
「……お前はどうする? あからさまに雅美ちゃんのこと狙ってるでしょ」
「俺は手ぇ出しますよ、異世界だろうが何だろうが雅美は雅美ですから」
「そう言うと思ったよ。お前ほーんと男前だよね」

くく、と喉の奥で笑う俺に「よく言われます」なんて自慢げにしてから、ゲンマはふと視線を落とした。
濃茶色のその瞳は慰霊碑を静かに映す。

「むしろ俺は雅美がそういう存在だってこと……少し嬉しく思いますよ」
「嬉しい?」

雅美ちゃんの事実を知って【嬉しい】という感情にどう結び付いたのか、理解することができずにゲンマの言葉の続きを待つ。

「だって俺ら忍なんて雅美と同じくらい不安定な存在でしょ。それこそいつ死ぬか分からないし、死んだ後は死体なんて残らない。ここに在ったという証は石に刻まれる名だけ……。だから雅美の実際を知った今、変な話し前よりずっとしっくりくるんですよ」
「……」
「ま、あいつが消えるのが先か俺が死ぬのが先か。どっちにしてもそんな大差無く逝けるんじゃないっすかね」

それは実に彼らしい考え方だった。
呆れる程に明るく前向きなようで、底が見えない恐ろしさがあるような。
言葉を失くした俺を見たゲンマが、どこか満足気に口の端を上げた。

「ま、今のところカカシさんに分があるみたいですけど、なんかもたもたしてるんで安心しましたよ。まだ俺にも付け入るチャンスありそうですから」

そう言い残して、ゲンマはすうっと雨の音に溶けるように姿を消した。


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