カカシ先生長編改造計画 | ナノ


ゲンマとの間に起こった事実を雅美ちゃんから聞き出したい一心で出る、もっともらしい理由。
こんな時、自分の狡猾さに嫌気がさす。

苛ついてしょうがない。
雅美ちゃんはゲンマだけには敬語を使わず、呼び捨てで名を呼び合っている。
どういういきさつでそうなったの?
いつの間に軽口をたたき合う程に親しくなったの?
俺の方が比べ物にならない程、一緒に過ごしているのに……

「ゲンマと雅美ちゃんの間に何かあったならそれはそれで構わないから。ただ俺は君の身辺について知っておく義務があるんだよ」

よくまあペラペラと心にも無いことが口から出るものだ。
何かあっても構わないなんて嘘に決まってるでしょ。
お願いだから話して。
ゲンマを庇ったりしないで俺を安心させて。

「カカシさんが心配するようなことは何もないんですってば……どうして分かってくれないんですか?」
「心配することかどうか、それは俺が判断するから」

雅美ちゃん、お願いだから。

「……そんなに私が信用できないですか? 余所者だから」
「っ、ちが――…」
「だったらケンゾウさんに24時間監視でも何でもしてもらったらいいでしょっ!」

涙をいっぱいに溜めたその強い瞳に、偽りの色など欠片も宿してはいなかった。
俺はキッチンを出て行く雅美ちゃんの背中を、ただ呆然と見送ることしかできなくて。
彼女が水を飲んだのだろう、シンクに置かれたままの透明なコップをそっとなぞる。

(余所者……)

雅美ちゃんにそんなことを言わせてしまった。
後悔の念で肺の真ん中あたりがズキズキと痛む。

部屋に閉じこもってしまった彼女に声をかけることもできず、パックンを残して家を後にした。
つい数刻前まで彼女は楽しそうに笑っていて。
大好きなビールを飲んで、ここへ来てからできた仲間達と賑やかな時を過ごしていて。

俺は。
俺は彼女に何をしてるのだろう。
大事なのに、誰よりも大切にしたいだけなのに……。

目的も無く歩く夜道はもう家の灯りも消えて暗い。
このまま何も考えずに何も見ずにいられればいいのに、そう思うけれど夜目の効く俺はそんな感傷に浸ることすらできないから。

自然と足が向くのは、いつもの場所だった。




 

prev / next
[ back to top ]

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -