カカシ先生長編改造計画 | ナノ


よくまあこんなにべったりくっついて歩けるものだ、とある意味感心してしまう。
俺の腕に自分の腕を絡め、ピタリ寄り添うように身体を密着させる女は、必要以上にゆっくりと足を進めていた。
こうしている間にもゲンマは雅美ちゃんに良からぬことをしているのでは……そう思うと一分でも一秒でも早く帰りたくて堪らない。
苛立ちと焦りがグルグルと思考を支配する中、俺はとにかく開放される地であるこの女の家を目指した。

やっと女の家の前まで着くと、即座に「じゃあこれで」と踵を返す。
しかし俺の腕をギュッと握ったまま離さないくの一は、俯いたまま動こうとしない。
予想していたこととはいえ面倒な事態に溜め息を吐く。
女から香るキツイ香水の匂いが、鼻について不快この上なかった。

「家着いたでしょーよ、離してちょーだい」
「……お礼もしたいですし、上がっていきませんか? 美味しいお茶頂いたんです」
「そんな安っぽい誘いに乗ると思う?」

そんな気はさらさら無いので迷惑だ。
という事実を隠すことなく答えれば、女はカッとしたように握る腕に力を込めた。

「っ、カカシ、どうしちゃったのよ! 前までだったら誘えば必ず寄ってくれたじゃない…!」

突然変わった態度よりも何よりも、女の言った内容に驚く。
確かにそうだった。この女の言うとおりだった。
それこそ今までの自分であれば、なんの躊躇もなくこの見え透いた安っぽい誘いに乗っていた。
記憶には無いが、きっとこの女のことも抱いたことがあるのだろう。
来る者拒まず去る者追わず、後腐れさえ無ければそれで構わない。
自分はそんな男だったのだ。

愛しいと思える人ができた途端こうも違うものなのか……自分自身の変化を改めて自覚する。

「あの一般人のせいよね? カカシ、あの一般人が来てから人が変わったみたいだって……すごく噂になってるのよ?」
「……で?」
「カカシが護衛対象に私生活まで振り回されているなんて、とても見過ごせないわ。私が直接火影様に訴えてもいいし……とにかくあの一般人がカカシに悪影響を与えているのが許せないの」

一般人とか忍とか…くだらない優越感と嫉妬で、自分が相手にされないことを他人のせいにしようとする。
俺は今までこんな女達と寝ていたのかと思うと、自分に心底嫌気が指した。

「……彼女に何かしたら、女でも容赦しなーいよ」

にっこりと微笑んで見せると、別段殺気を出したわけでも無いのに女は顔色をなくす。
絡めていた腕をゆっくりと下ろした女を一人残し、俺はその場を後にした。

振り回されてる?
悪影響?

まあ忍としての俺を思えばその通りかもね。
でも、その事実が俺とって酷く尊いものなんだ。


 

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