カカシ先生長編改造計画 | ナノ


(あいつ……、俺がいない隙にここぞとばかりに口説きやがって)

「カカシさぁん、私酔っちゃったみたいでー」

(いい加減にしないと雅美ちゃんが困ってるでしょーヨ)

「家まで送ってもらってもいいですか?」

(あーあ、またビール頼んで……。雅美ちゃんも飲みすぎだし)

「カカシさん……カカシさん!!」

袖口をぐいっと引っ張られ、俺はやっと隣にいるくの一に目を向けた。
思いの外近くに女の顔があったことに一瞬瞠目する。

「あ、と……なに?」
「私、ちょっと飲み過ぎちゃったみたいなんです。足元がふわふわしちゃって……」
「……はぁ」
「気分も悪くなってきたし、もう帰ろうかなぁって」
「そ? 気を付けてね」
「……あの、カカシさん! 真っ直ぐ歩けない感じなので家まで送ってもらえませんか?」
「…………」

(明らかに嘘でショ)

飲み屋に似合わない香水の匂いと、いつの間に付け直したのかテカテカと光る唇のグロス。
ここぞとばかりに上目使いで見上げる女を見て、心の底から嫌気が指す。
さてどう断ろうか、なんて考えつつ時計に目をやれば、そろそろ店も終わる時間だった。
今この女を送って行けば、店に戻る頃には飲み会もお開きになってしまっているだろう。
それでは雅美ちゃんと一緒に帰ることができなくなってしまうし、まあ単純に面倒だった。

「やー、俺ちょっと用事があるからごめんネ」
「用事って?」
「そんなの君には関係ないでしょ」
「……その【用事】って、あの一般人に関係あることですか?」

本当に面倒くさい。
考えることすら鬱陶しいこの状況をどうしたものかと、何度目か分からない溜息を吐いた時、ふとカウンターテーブルに影が落ちる。

「いいっすよカカシさん、その子送ってってください。あいつは俺が送って行きますから」
「……ゲンマ」
「ですって、カカシさん! 行きましょう!」

いつから聞いていたのか、背後から声をかけてきたゲンマの言葉に女は嬉々として腕を絡めてきた。
ゲンマに雅美ちゃんを任せるなんて冗談じゃない。
俺の目が届かなくなれば、こいつはきっと好機とばかりに彼女に迫るだろう。
しかし、ここでこのくの一の機嫌を損ねれば怒りの矛先が雅美ちゃんに向くことも確かで――…。
これは正に苦渋の選択というやつだ。

(今日のところは仕方ない、か……)

大きく息を吐いて席を立ち、ゲンマの顔を見ないまま横に並ぶ。

「……わざわざ忠告しなくても分かるよね?」

飲み屋で出す殺気じゃないとは思えど、雅美ちゃんに関する大人げは持ち合わせていないのだからどうしようもない。
目の前の特別上忍はそんな殺気に臆することなく、口に咥えた千本をくいっと上げて笑みを浮かべた。

「あいつが嫌がることはしないですよ」

真正面から受けて立ったゲンマの好戦的な言葉に、ぶわっと膨らんだ感情。
騒がしい店内が一瞬水を打ったように静まり、そんな空気もそのままに俺は店を出る。
ドアに手をかける直前雅美ちゃんに視線をやったけれど、この距離からでは彼女の心情を窺うことはできなかった。


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