平均41の差




「あ、トラファルガー。」
家に帰る途中に女子高生に話しかけられる。まったく、こりない女だ。
「なーにカッコよく考え事してるんだよ。」
頭を小突かれる。いてぇ、っていうと「わりぃわりぃ」と笑われた。謝罪があまりのも軽すぎる。
「勝手におれの頭をさわるな、お前がおれのカノジョになってくれるなら話は別だぞ。」
「ぷっ、ばぁか、あと10年経ってからそのセリフ言えよ。」
「うっせぇ!それまでにお前がコンヤクシャとかできてたらどうするんだよ!」
女は「難しい言葉を知っているんだな」と頭を撫でてほめてくれた。触ってくれてうれしいけど・・・完全に子ども扱いだ!!
「今日はどんなことを先生に教えてもらったんだ?」
「足し算とひらがなの書き方テスト。かんたんすぎてはなしにならねぇよ。」
「本当にかわいげのない小学一年生だな。」
そう、おれはまだ小学生。そしてこの赤い髪が印象的な女とは10歳も離れてる。年齢だけじゃなく知識も身長も体力も全部こいつのほうが上だ。悔しいけど歳の差を感じる。

こいつとの関係はいたって普通、お隣さんだ。小学校に入る前に今の家に引っ越し、最初に両親と挨拶に行ったときその女を見かけた。その時は何も感じなかった。高校生の女が隣にいるんだな程度の認識だった。
でもある日鍵を家に忘れて自宅前でしゃがんで親が帰宅するのを待っていたことがあった。共働きで母親はたぶん19時ぐらいには戻ってくると思うがやることがなくてつまらなかった。まだ16時、困ったことに慣れている土地じゃないから公園に行っても邪魔者扱いされるのが落ちだと思うし警官に捕まるのも嫌だから自宅前で待機した。鍵を忘れた自分をちょっぴり憎んだ。
その時帰宅途中だったお隣のキッドという女に見つかった。まぁ当たり前か。不審に思いつつも自宅へ入るだろうというおれの予想は外れてしまった。
「どうしたんだ?親は?鍵とかないのか?」
ここまでお節介焼きとは思わなくて無視してうつむく。無愛想なガキだと思って家に入るだろう。しかしまたしてもおれの予想は外れてしまった。女は突然おれを背負って駆け足で自分の家へ戻る。おい、どうでもいいからおろせよ!と言ってみたけど「ガキの命令なんてきくか!」と返されて無理やりお宅訪問することになった。
とりあえずおれは女の部屋に連れられて嬉しそうな顔した女は台所に向かってしまった。この部屋の東側、つまりこの窓からおれの家が見えるわけだ。おそらく俺の部屋だろう窓がやっぱり見えた。部屋はシンプルだけど今時の女子高生らしさがちょっと垣間見れた。小物を飾ったりぬいぐるみやクッションをベッドに置いているのがいい証拠だ。そんな観察をぼんやりしていると本人が戻ってきた。お盆を持っていた。そこにはさらに広げたポテチとオレンジジュースのペットボトル、コップが二つ用意されていた。ガキ扱いはちょっと気に入らなかったけどここは仕方ないと割り切ろう。お菓子を食べながら他愛のない話を続ける女。今までこんな風に年上から話されたことがないから緊張もしていたし不思議だと感じていた。話を進めるうちにこいつもおれと同じく両親が共働きで幼いころは寂しい思いをしてきたようだ。今は慣れて平気らしい。そんな話が終わったと思ったら突然大きめの女らしいケースからゲーム機を取り出して一緒にやろうと誘われた。この女、可愛いものは好きだけど口調やゲームを見ると男っぽさも見えるな、と勝手に観察していると小突かれて仕方なくゲームに付き合うことにした。ゲームはそれなりにしたことはあったがやっぱり慣れている奴にはかなわなくて負けっぱなしだった。悔しがってると女はこう言うのだ。
「なぁ明日も暇だろ?今日と同じように一緒に遊ぼうぜ。夕食も俺が作る、一緒に食べたほうがいいよな。」
女の笑顔を見る、そしておれはかつてないほどにドキドキし始めていた。訳わかんないぐらい心臓が痛い・・・一体どうしてしまったのかわかんない。
そんなおれを見て不自然に思ったのか女はおれの頭をよしよしと撫でてくれた。子ども扱いにいらっとした反面、さらにドキドキもした。一体全体おれはどうしてしまったのかわからなくてそのあとのことはあまり覚えていない。夕食の女手製のハンバーグがすごくおいしかったのを覚えている。
友達に大ざっぱに自分の中で起きたことを話した。するとそれは恋じゃないのかと言われた。・・・恋?確かにドラマとかで知ってるけどまさかおれに限って・・・なんて思った。その日から恋についていろいろ調べてみた。でも文章じゃいまいち説得力がなかった。だから少し恥ずかしかったけど本人に訊いてみた。恋とはどういうことなのか。
「お前幼稚園とかで好きになったことかいないのか?恋ってのはな、好きになった奴と一緒にいたいとか笑っていたいとかそんな風に考えることを言うんだぞ?」
やはり人の言葉から聞くのが一番わかりやすい。だから一番気になってることを訊いた。
今、お前は恋をしてるのかと。
すると一瞬固まったように見えたが笑って答えてくれた。
「ふふっ、小学校の時とか同じクラスのかっこいい男子を好きになったことがあったけどな、今はまだいい相手が見つからないから恋人募集中だな。」
それを聞いておれは一大決心を女に告げる。
「じゃ、じゃあ!!おれがお前のコイビトになる!」
今のおれの顔は相当ひどいと思う。顔は熱くて赤くなってると思う。女の顔を見るのが少し怖かった。すると女はおれの頭にぽんっと手を置いた。
「本当に好きになってくれるのか?・・・ふふっ、ありがとう。」
その時見せた顔が寂しそうだったとおれは思った。そんな顔されたらおれの初めての告白は大失敗じゃないか・・・不覚にも泣きそうになった。
「あぁ別に断ったわけじゃないぞ?そうだな、お前がおれより背が大きくなったらちゃんと交際しような?」
なんだか悔しい思いをした。身長も年齢も離れすぎる運命に苛立ちを感じたしなにより悲しんでいる彼女になにかしてやるとかできない自分の無力さが腹立たしかった。
そんな女をおれはユースタス屋と呼ぶことにした。

告白をしてから早半年、全くと言っていいほど関係は進展していない。
「ぜったい中学になる前にユースタス屋を抜かす!」
「はいはい期待してる・・・あ、メール。」
おれの決断をあっさり流してケータイを開くユースタス屋。見てろ、いつか見下ろすぐらい大きくなってやる!
「麦わらからか・・・カラオケのお誘いかぁ、せっかくだし行くか。」
おれという存在がありながらユースタス屋はおれの目の前で他の男との約束をしやがった。イライラしてユースタス屋をにらむ。
「もちろんお前も一緒に行くよな?」
満面の笑みでそんなことを言われたら怒る気も失せてしまう。かわいい女が頼んでいるのだ、それをおれは断れなかった。差し伸ばした手はとても暖かくていつか自分から彼女に手を差し伸ばしてみたいとまた願望が増える。



(目線は合わないけれど心の距離は近くにいたい)



やらかしたとわかっている。後悔はしていない。にょた祭り1作目。
小学生ローと高校生キッド どうやら管理人は年下×年上が好きらしい
犯罪級に離れてるけどな!でも好きだ!
キッドもローくんが好きなんだけどでもちょっと差がありすぎて交際したら逆にローくんを傷つけちゃうんじゃないかってちょっとはらはらしてるのです。
まぁこんな感じで!←

20110522