ズルイ貴方



最近、俺はイライラしている。その原因が今日もまた現れた。
「あのさ・・・さっきの時間寝ていただろ?その俺のノート・・・見ないか?」
そらみろ。いつものように俺に絡んできやがった。
「てめぇ、誰の了承を得て勝手に人の顔見てたんだ?」
「ご、ごめん・・・・・・俺の席斜め後ろだしたまたま見えたから・・・」
こいつは何かと俺にかまってくる。そしてすぐに謝るヘタレ、見ても聞いてもイライラする。
「見たくないなんて言ってねぇからそれ貸せ。」
「あ、うん・・・・・・」
素直にノートを渡す姿を見てまたイライラ。イライラのままノートを受け取り放り投げるようにかばんに入れる。なんで俺の言葉を聞いて下がろうとしない、弱いくせに何で俺に関わろうとする?理解できねぇ
このヘタレでしょっちゅう俺に話しかけるこいつは実は小学校からの腐れ縁。そりゃあこれでも尊敬はしてるんだぜ?
こいつのことは大体知っている。勉強はいつもトップ、性格はそんなに明るくないが陰で周りを支えてたりする。中学の学校祭の時も仕上がりがいまいちだとかってほざいて放課後まで残って作業をしていたのは知っている。その年の俺たちのクラスが一際にぎわっていたのを覚えている。
それがいつからだったか・・・俺と話す度におどおどしていちいち謝って俺が近づくと不安そうな顔をする。ムカツクムカツクムカツク!!俺が一体何をした?あいつに対して暴力を振るったこともバカにしたことも一度もない。なんで俺にそんな態度をとる?んでもって意味もわからないまま俺に優しくする?お前のせいで俺はひねくれてしまったんだよバーカ!

「あのさ・・・・・・ユースタス屋」
「んだよ・・・」
また意味もなく話しかける。
「映画行かないか・・・?ユースタス屋が好きそうなアクション映画のチケット二枚、手に入れたんだ。」
ほら、と俺に映画のチケットを見せる。こいつも意地が悪い、俺は先週こいつの目の前で最近流行りのアクション映画を見たいとぼやいた。だから「好きそうな」ではなく『好きな』と言うのが正しい。
「ごめん・・・」
「いいからよこせ。欲しかったからな。」
手を差し出すと「はい」と小さな声でチケットを二枚渡す。「友達と楽しんでこいよ」とも呟かれてイライラした俺はつい怒鳴った。
「ふざけんな!てめぇのもんなんだからてめぇが使うのが当り前じゃねェか!!一枚余ったから俺が使う、そういうことだろうが!」
驚いた顔して俺を見る、そして自然に頷きやがる。俺はそいつに土曜の9時に映画館の前に嫌でも来いと勝手に約束してその場から離れた。後ろでなんか声が聞こえた気がするが気のせいだと思い込むことにした。


約束の日当日、10分前に到着するとすでにそいつはそこにいた。まるでずっといましたよ、と言う感じで待機していた。チケットを一枚差しだし黙って映画館に入る。そしてその後ろを慌ててついて行くトラファルガー。俺のイライラはますます強くなるばかり。
本当にこいつは残念な人間だ。黙って突っ立ってりゃかなりのイケメン、だが引っ込み思案でおどおどするただの弱虫。あームカツク!!
そして俺たちは片手にジュースを持って超満員の映画館へ突入した。指定席に座り上映するのを待つばかり。だがこいつはそわそわして落ち着かないようでなんかそれも腹立つ。言いたいことがあれば言えばいい、長い付き合いだから何も躊躇することなどないはずだ、なのになぜ俺に何も言ってくれない、なぜ・・・なぜ・・・
楽しみだったアクション映画もこいつのせいで表面上しか楽しめなくなってしまった。こいつが全部悪い・・・なにも言わないこいつが・・・
映画が終わって控え目に昼飯でも食べないかと俺を誘う。なんだかイライラを通り越して悲しくなってきやがった・・・無表情のまま承諾し無表情のままファーストフードを購入。その時のハンバーガーの味はあまり覚えていない。
その帰り、歩いて帰る途中のことだった。お互い何もしゃべらねぇつまらない帰路の途中で公園を見かけた。昔はここでこいつと遊んだ場所だった。今じゃすっかり懐かしい場所だ・・・折角だからちょっと寄ってみるかと黙って公園に入った。そのあとを慌ててあいつはついてきた。
あの時に比べこの公園はだいぶ変わった。ボロボロの滑り台も鉄棒もピカピカの新しいものに取り換えられて変わってないのは周りの雰囲気とか砂場とか数が少ないかもしれない。その中で変わったものの一つに目を付けた。ベンチだ。昔はよくこいつとこの公園のベンチで大切な話をしていたお決まりの場所だった。学芸会での練習でうまくやるにはどうすればいいのかとか、テストはどうすればいい点を取れるかとか、夏休みはいつプールに行こうかとか、他愛もない小学生の相談をしていた。思えば相談はいつも俺からで頼りっぱなしだったな。
中学になってからは全然来なくなった。俺が部活を初めてここにこれなくなったのが原因だが。・・・少し思い出したが、こいつが俺に対しての態度がよそよそしくなったのは中学2年になったころからだった気がする。俺はこいつに一体何をしてしまったのだろうか?
当時はぼろぼろで今にも壊れそうだったベンチは今は面影は全くなく、青く染まったきれいなベンチに腰かけた。ついてきたあいつは俺の目の前に立っていた。さすがに隣に座ろうとはしなかった。夕方の公園は綺麗に赤く染まっていた。その赤い光で照らされるこいつの顔、なぜか寂しそうに見えたのは俺がイカれた証拠なのだろうか?
「訊いていいか・・・・・・」
自然と口が開いたと思ったらそんな言葉が出た。「うん・・・」と小さな返事が俺の耳に届いた。
「この際はっきりさせてくれないか?俺のことが嫌いなのかなんなのかをよ。」
話した瞬間、えっ、という声が聞こえた気がした。
「話しかける時なんでいつもおどおどしやがる・・・俺はてめぇに酷いことなんかした覚えはねぇしお前からもなにかされたわけじゃない。じゃあ一体何がどうしてこんなに変わっちまった?頼むから教えてくれよ・・・イライラするのは疲れたんだよ・・・」
本音をありのままに話した。
「・・・・・・俺がビクついてたのはお前に嫌われるかもしれないって思ってただけ。お前は悪くない。ここで相談してくれたってことは覚えていてくれたのか?小学生のころの・・・」
「あぁ・・・・・・」
「そうか、そんなお前だから俺は少し勇気を出して言ってみる・・・好きだ。付き合ってくれ。」
真面目な顔してそう言われた。え、なにがどうして・・・戸惑っていると急にやつは慌て始めた。
「わ、わりぃ!急にこんなこと言っちまって・・・すぐに返事無理だろうからまた今度な!!」
突然その場から逃げるようにダッシュしてしまった。

あいつは本当に馬鹿だ。俺の返答を聞かずに逃げやがった。迷惑な奴だ。頭がいい癖になぜ俺の気持ちに気付かないのか。俺がなぜお前のことを詳しく知っているのか。ただの幼馴染じゃ知れないことまで俺が知っているわけをあいつはきっと考えたことがないのだろう。
あーあ!!大きいため息ついて俺はこんなことを思う。




(両想いだったなんて知らなかったよバーカ!)





ツンデレがわか・・ら・ぬ・・・
遅くなって本当にごめん!!ジャンピング土下座するから許して←
いやむしろ殴る蹴るの暴行してくれ!!
それではありたん、おめでとうございます^^

110424