不安と期待







「えーっとまずは自己紹介を」
「手紙に俺のことは書いてあっただろ?それにお前のことはお前の親から聞いている。」
「・・・・・・・学校は?」
「俺の家もこの地区だからいつも通り通うだけ。あ、北海小学校な。」
「他には・・・・・・」
「その前にご飯!俺腹ペコなの!!!」


あー・・・・・・・・・・・俺なんか悪いことしたっけ?まだ出会ってから1時間も経っていないのにすごく憂鬱になるとはこれもまた予想外。どこか大人びてる言葉もあるがやはり子供、年齢に応じた幼さをどこか残している気もするが年上に対する言動はなってないだろこれ。


「じゃあ・・・何が食べたいか言え。」
「基本何でも食える。それにいきなりカレーつっても出ないことぐらい知ってる。」
「いちいちうるせぇな・・・本当に何でも食えるんだな?」
「何度も同じこと言わせんな。」
「ったくしょうがねぇな。じゃあ米はあるからそれと昨日の残りのマーボーナスでも温めて・・・」
その瞬間、こいつの肩がびくりと動いたのを俺は見逃さなかった。
「おい・・・まさかナスが嫌いなんてことは」
「食える!!!嫌いなんて言ってない!!!!!」
「あのぶよぶよの触感はやばいよな?」
「そうなんだよ。あのぐちゅぐちゅな感じを味わいたくない・・・・あっ!」
つい口を滑らせたこいつは俯いてしまった。それを見て俺は笑いをこらえてこいつを見てしまう。
「笑うなよ!!!俺子供なんだから好き嫌いあっても仕方ないだろ!?」
「くくっ・・・わかってるって。じゃあちょっと待っててな。」
核心を突かれて怒鳴ってくるトラファルガーについ笑ってしまった。こいつもやっぱりなんだかんだいってガキなんだな。
俺は冷蔵庫から豚肉と野菜を取り出して軽くフライパンで焼く。子供でも食べれそうな生姜焼きと野菜炒めを手っ取り早く作る。米も茶碗によそって立派な昼飯になったことだろう。不満そうな顔で一口生姜焼きを口にする。

「どうだ?味の方は。」
「んー・・・まぁまぁかな。」
「素直にうまいって言えよ。」
「うるせぇ・・・・・・まずいとは言ってないだろ・・・」
素直じゃないけどなんだかんだ言って結局ガキらしいトラファルガー。その証拠に次々と皿を空にする。用意した麦茶も1滴も残さず飲み干した。
どうやら俺の料理は気に入ってくれたようだ。


「この後お前の部屋の用意をしてから夕食の買い物に行くんだが何が食いたい?」
「・・・・・・・・何でも作れるのか?」
「おう、一人暮らし(仮)は長いからな。」
「人は見かけによらないんだな。」
「ほっとけ、で何が食いたいんだ?」
「オムライス・・・」
これまた意外に子供らしい注文が来た。どうやら俺の今日の夕食の予定は狂いそうにないな。
「よし任せろ。」
「変に即答だな。本当に作れるのか?卵ちゃんと巻けるのか?」
「ふふん、俺はオムライス好きだからな。卵を巻くのはお手のもんだぜ?」
「ど、どうだか・・・・」一瞬俺に期待した目で見ていたのも見逃さなかった。






そのあと片づけだのなんだの色々あって買い物に行った。さすがに誘ってもついてこなかった。でもほっとしたのかしばらく父の書斎だった部屋(家に帰ることもなかったからほとんど使われていない部屋だけど)のベッドでトラファルガーは横になって休んでいる。この部屋はしばらくあいつの自室にしようと思う。生意気でむかつくガキだが気が緩む食事や睡眠は素直な表情を見せるので思わず笑ってしまう。夕食で俺は自信作のケチャップオムライスをトラファルガーの目の前に置く。さすがに俺と同じ量はまずいと思って少なめに用意。トラファルガーは目を丸くしてオムライスをしげしげと眺める。食わないのかと俺が話しかけると慌てたようにスプーンを持って俺の自信作を一口。その瞬間そいつは明るく微かに笑った、がすぐにいつもの生意気顔に。味を訊ねると「昼よりはまぁまぁいいかな」と素直じゃない評価をもらった。微かな笑顔を貰ったから良しとしよう。




夜10時過ぎ、皿洗いなどを終えた俺は部屋で一人ベッドを椅子にして漫画を読んでいたところにパジャマ姿のあいつが現れた。

「なんだ眠れないのか?一緒に寝ないと不安か?」
「うっせー!どこまで俺をガキ扱いしてるんだ。」
「ガキは見た目通りガキだろ。」
「誰かいないと寝れないとかどこの赤ん坊だよ・・・違う!俺はそういうことを言いに来たんじゃなくてその・・・・・・」
「?どうした・・・?」
「お・・・・・・・・・・・・・・・・おやすみっ!」

部屋の戸を勢いよく閉めて部屋に戻るトラファルガー。やはりガキだ。俺様的なわがままも子供ゆえの行動の表れなのだろう。奇妙な存在だが、俺はこの奇妙な存在としばらく暮らすことになるのはそこまで苦にならないと感じた。なにせこの俺の家に誰かがいると言うことは俺が孤独ではない証明なのだから。






「ったく・・・おやすみの返事ぐらいちゃんと聞けよ、バカファルガー。」


(これからの生活に不安を覚えながら期待する)





生意気なショタが好きです









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