呆けていると、片倉から声が掛かる

その不安そうな表情を見て、漸く我に返った



「あ、あぁ…すまなかったな」

『いや…朱華組は質が悪ぃって評判だ、気ぃ付けな…っても。ここら一体は竜牙組のシマだが』



み、妙に詳しいな…

しかも無口な片倉がこんなにも喋るのは、初めて見たぞ

………口調荒いが



「…お前、喋るんだな」

『当たり前だっつの!…あー…』



片倉は眉を潜めながら、髪を掻き毟る

そして再び、口を開く



『…俺の親父、竜牙組の組員なんスよ…』

「だから詳しいのか」



成る程。父親が組員の1人ならば、詳しいのにも納得出来る

しかし…それと無口にどう繋がるのだ?



『お袋が餓鬼の頃に他界しちまったから、組で世話になってたんスよ。だから…あー…口を開くとコウなるって訳』

「…治そうとしなかったのか?」

『中学の頃から気ぃ付けてコレっス。ほぼ喧嘩口調に近ぇから、問題を起こしそうだし…』

「……そういう事か」



幼少時に培われた事は引きずる…と何かの書物で見たな

片倉はちゃんと周囲を考えていたのか



「片倉ちゃん!元気かい?」

『ああ、元気さ』

「隣の人は好い人かい?」

『俺の恩師だっつの!!』

「シュガーおねえちゃん!おまつり、やる?」

『おう、やるぜ!楽しみにしてな!!』

「片倉ちゃん!筆頭と片倉様はお元気かい?」

『あの二人は相変わらずだぜ?』



中を歩くだけで、片倉は色々な人から声を掛けられる

それほど、彼女は好かれているのだろう



「…片倉、お前はお前だ」

『は?』



俺の言葉に片倉は目を瞬く

これは彼女の個性であり、短所ではない



「お前らしくあれば良い」

『………はいっ!!』



少し間を開けて、片倉は返事を返す

照れた様な擽ったい様な、満面の笑みを浮かべて




(テメェら…いい加減にしやがれや、コラぁ!)
(((怖っ!!)))
(……早まった、か?)



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