佐助の台詞を聞いた二人は、重く大きな溜息を吐き出す


実は彼等がちゃんとするか、青葉と土方は些か不安だった

その不安が、まさか的中するとは…



「……済まないな、猿飛」

『頼んだよ、佐助』

「俺様にお任せあれ〜ってね!」



落胆する二人に、佐助は気を紛らわせるかの様に

軽快な声音を発して、踵を返した



『……まともに、やる訳ねぇわな……あの問題児達は……』

「だよな………」



佐助が退室した後、二人は肩を落とす


二人は通常業務の多さが半端無い

そんな中での、この騒動だ


精神的に疲れない訳がない



「トシさん、青葉君。ちょっと良いかな?」



そんな中、聞き慣れた声色が廊下から掛かる



「源さん?」

『大丈夫ですよ』



二人の返答の後、井上がゆっくりと室内に足を踏み入れた



「頼まれてた食材調達なんだがね」

『そういや…源さんに頼んでた』



罰が悪そうに青葉は表情を引き攣らせる

どうやら井上に買い出しを頼んだ事を、失念していた様だ


隣では土方が、不思議そうに首を傾げる



「おい。何で源さんなんだよ?」

『だって源さん、野菜の目利き出来っからさー』



すると井上は穏やかに笑む



「いやいや、青葉君程じゃないよ」



青葉の野菜の目利きは、市中の野菜屋でも評判である


だがそれもその筈

彼女に目利きを教えたのは、誰でもない【竜の右目】なのだから

……彼に目利きで適う人はいないと、管理人は思います



「良い食材が手に入ったよ」

『そりゃ良いや。元旦の飯、豪勢に振る舞えらぁ』



ふと井上が、何かに気付いた様に口を開く



「その元旦の食事は、誰が作るんだい?」

「そう言えば、そうだな」

「おや。トシさんも知らなかったのかい」



目を軽く瞬かせる井上に、土方は頷く

そんな彼等に、青葉はあっけらかんと答えた



『俺と佐助だけど?』

「「……………」」



彼女の返答に、つい二人は顔を見合わせる

そして直ぐに口元を緩ませた



「そうか、青葉と佐助か…」

「こりゃ豪勢で、美味しい食事になるんだろうねぇ」



屯所の方々で聞こえる、隊士達の喚き声や悲鳴を聞きながら

土方と井上は、元旦の食卓に思いを馳せた







そして元旦当日

彼等は高級料亭に出そうな、豪華な料理に舌鼓を打った事を記しておこう



師走の風 完




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