「皆、とにかくご苦労様!明日はゆっくり休んでくれ!」



近藤の言葉に、一同が解散していく

ふと鈴々音は、斎藤へと歩む



『(一、千鶴が佐助ん所で待ってる。送ってやってくれ)』

「…………あぁ」



薄く赤く頬を染めながら、斎藤は足早に歩を進めていった


彼女は不敵な笑みを浮かべつつ、事務所とは逆の方向へと踵を返した



*****



「……何やってんだ、お前?」

『何って…在庫チェック』



すっかり帰宅準備を済ませた土方だったが

明かりが着いていた裏手の倉庫に向かうと、そこには鈴々音の姿があった



「在庫チェックって、お前な…」

『やっとかないと、後が厄介だからな…』



溜息混じりで土方が口を開くと、眉間に皺を寄せながら彼女は淡々と語る



「っーか帰れよ」

『徒歩で10分も掛からずに帰れるから、別に問題無いし』



鈴々音の住まいは、ここから歩いて僅か10分足らずの所にある



「てか帰れっの。10分掛からねぇっても、お前は女だろうが」

『一応な』

「…おい…」



ピキリと土方の米神に、青筋が立つ

どうも彼女はこういう事に疎い様だ



「つか今直ぐに帰る支度しやがれ」

『はぁ?』



目を見開く彼女に、土方は尚も続ける



「今直ぐに支度しやがれ、俺が送ってやる」



彼の言葉を聞くなり、鈴々音は目を見開たままで固まった

暫くすると彼女は空に向けて、手を挙げる



『……えーと……槍降るかな?』

「降らねぇよっ!」



*****



とあるアパート前に、赤の単車が停まる

後ろに座っていた人物は、直ぐさまメットを外す



『サンキュ、助かったわ』



――鈴々音である



「別に構わしねぇよ。帰り道だしな」



そう言いながら、単車に跨がりながらメットを外したのは土方

土方は単車での通いなのだ



『しかし寒ぃなー』

「んな恰好してっからだろ」

『るせ』



彼女の恰好とはジーパンに薄手の上着を羽織っただけ

12月下旬の真夜中に近い時間では、寒い恰好である



「ったく…」



土方は仕方無いと言わんばかりの表情を浮かべると、何やら取り出した

そして、鈴々音の首筋に手を伸ばす



『ぐぇっ!』

「……色気ねぇ悲鳴だな、おい」

『ていうか!窒息死させる気か!………って、コレ……』



彼女の首元には、グレーの暖かなマフラーが巻かれていた

目を瞬かせる鈴々音に、土方は視線を逸らす



「あんまりにも寒々しい恰好なんでな」

『…………』



マフラーを凝視していた鈴々音は、手元の荷物を漁り始める

そして何かを取り出すと、あろう事かソレを土方に投げ付けた



「でっ!?」

『やる』

「やるって、お前なぁ!!投げ付けんなよっ!!」



怒りを露にする土方

だが彼は何が投げ付けられたか、気付いていない



『知らん。じゃーな』

「あ、おいっ!?」



彼を放置したまま、鈴々音は颯爽と立ち去って行った


残された土方は、呆然と佇むだけ

だが暫くして、何が投げ付けられたか気付く



「……こりゃ……手袋?しかもバイク専用じゃねぇか」



材質は革で出来たソレを、土方は自身の手にはめてみる

サイズもピッタリな様だ



「……粋な事をしてくれやがるぜ」



口元を緩ませる彼は、バイクに跨がり

颯爽と夜の街を走り抜けた





―――後日

二人が付き合い始めたのは、当人達しか知らない



聖なる夜に 完



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