目を見開く土方を余所に、青葉は僅かに首を傾げながら続けた



『多分Panic…混乱しちまって、訳が分からなくなっちまったんだろうな』

「…なぁ…」

『ん?』



自室前に辿り着いた二人は、会話を続けながら庄子を開ける


彼女は自室から茶飲み道具を持って、土方の自室へ入り

慣れた手つきで、お茶の用意を始めた



「…あの二人…余計、気まずくならねぇか?」

『…………何とかなんだろ』



コポコポと湯飲みに注ぐ手が止まる

その表情は固まり、冷や汗を流していた



「……お前、考えてなかったな?」

『そ、それよりトシ』

「…話、逸らしやがって」



暖かな湯気が立つ湯飲みを青葉は、話を逸らしながら彼に手渡す

さも当然の様に土方は受け取り、口にした


…傍目、完熟夫婦



『Trick or treat!』



笑みを浮かべる彼女

土方はそれに僅かに止まったが、直ぐに不敵な笑みを宿す



「………来ると思ったぜ?」

『What?……って、あ!デザート!何で!?』



彼の手元には何故か、夕飯後に出した茶菓子が

青葉は目を見開いて、茶菓子と土方を交互に見やる



「こうなると思ってな、手元に残しておいたんだよ」

『………やられた』



流石鬼副長と呼ばれるだけある、彼女は一本取られた様に額に手を宛がった

不意に彼の表情に、不敵の笑みが浮かべる



「鈴々音」

『ん?』

「…とりっく おあ とりーと、だったよな?」

『……げっ!?』



土方から口にされた言葉を、予想していなかったのか

青葉はしばし固まった後、顔から血の気から引く



「クククッ…菓子が無けりゃ、悪戯して良いんだよなぁ?」

『ち、ちょ…トシさん?このこの体制は何でしょう?』



笑みを崩さぬまま、土方はずずぃと彼女に押し迫ってきた

青葉は腰が抜けた様にへたり込み、そのまま後退る


だが彼が逃す訳がない

四つん這いの体勢で、土方はどんどん彼女へと迫る



「菓子が無えんだろ?菓子の変わりに、てめぇを喰ってやるよ」

『ちょ、待てぇ!つか手を、腰に手を回すなぁ!』



ひぃぃ、と悲鳴を上げながら青葉は彼から逃げようとする…が

妖艶な笑みと声音と共に彼女へ迫る土方から、どう逃げられるのか


彼の瞳は【獣】の目と化している



「クククッ…」

『っ!トシっ!』



一歩、また一歩と。土方は青葉に迫り

ついには彼女の部屋を跨ぎ、机際まで追い込んだ


だがそこで青葉は咄嗟に引き出しから何かを取り出し、彼にたたき付ける



「……金平糖……」



そう

彼女が土方にたたき付けたのは、小さな小袋に入った金平糖…


立場逆転と言わんばかりに、青葉は笑みを深める



『これも立派な、【菓子】だよなっ!』



暫く小袋を眺めてた彼は、渋々と立ち上がった

――そして、土方はポツリと漏らす



「………チッ…………」

『舌打ちすんなぁぁ!!』



Pumpkin Party 完



back mae tugi



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -