「はろうぃん?」
『そ。ハロウィン』
聞き慣れない単語に、土方は目を瞬かせた
彼女の義兄・伊達 政宗が南蛮事に詳しい様に、青葉も南蛮事には詳しい
土方は訝しげに目を細め、彼女を見やる
その表情は【何を言い出すんだ】と言いたげだ
それに気付いた青葉は、苦笑しながら口を開く
『南蛮行事さ、色々諸説があるが…
俺が聞いたのは十月三十一日の夜、死者の霊が家族を訪ねたり、精霊や魔女が出てくると南蛮で信じられていたらしい。それらから身を守る為に、発生した行事だそうだ。
南瓜ををくり抜いた中に、蝋燭を立てた【ジャック・オー・ランタン】っう灯りを作る。魔女やお化けに仮装した子供達が、【Trick or treat】(トリック・オア・トリート)と唱えて近くの家を1軒ずつ訪ねるそうだ。
因みに【Trick or treat】は【お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ】って意味』
「………」
彼女の解説を聞いた土方は、一気に眉に皺が寄る
「…それを、屯所でやるっーのか…俺は反対だぞ?総司が制限無しに悪戯しそうだからな…」
『そら俺だって把握してら。流石にそりゃしねぇよ、隊士達が混乱すんだろ』
「んじゃ何だよ?」
再度問い掛けた土方に、青葉は不敵な笑みを浮かべた
それに彼は背中に冷や汗が流れる
『……トシ、耳貸せ』
言われるがままに、土方は彼女の言葉に黙って、耳を傾けた
………
……………
…………………
「はぁ?本気かよ!?」
『当然』
驚愕する土方を余所に、青葉は当たり前の様に胸を張る
『許可…してくれる、だろ?』
「……っ!」
ニヤニヤと笑う彼女に、土方は溜息を吐き出す
そして呆れながら、首を縦に降るしか出来なかった
■■■
『良い南瓜が手に入ったなぁ』
「本当!」
「…でも何で南瓜を、こんなに買い込んだんだ?」
来たる、十月三十一日
青葉・千鶴・左之助の三人は、市中へ買い出しに繰り出していた
左之助の腕内にあるのは南瓜の山
それに彼は首を傾げる
『ニシシッ、夕餉になりゃ分かるさ』
彼女は不敵な笑みを浮かべるだけ
それからも二人は青葉へ、何度も問い掛けるも
彼女にのらりくらりと流されてしまい…
*****
大量の南瓜の使い道が分からないまま、夕飯を迎えた
『野郎共!飯だー!』
今回の夕飯当番は青葉、彼女が作り出す絶品料理は好評で
幹部達は何時も、青葉が作る食事を心待ちにしていた
だが――
「なんじゃこりゃあっ!!」
広間に入った新八は、膳の上に広がる料理を見て雄叫びを上げる
新八だけでなく、幹部の誰もが目を見開いて驚いていた
「凄いな…南瓜料理だらけだ…」
「てか、南瓜料理しかなくね?」
「…あの大量の南瓜は、これの為か…」
近藤は関心する様に、目を瞬き
土方は眉を潜めながら、首を傾げ
左之助は大量の南瓜の使い道を把握し、呆れた様に視線を泳がす
『何してんだ?』
そこへ襷(たすき)を解きながら、彼女が土間から現れた
「ね、姉さん。これ…」
『ああ、風邪予防』
「へ?」
膳一面の南瓜料理、その理由が【風邪予防】
あっけらかんと告げた青葉に、皆が呆然
『南瓜には風邪を防ぐ効果が、あるみてえなんだわ。最近寒くなったしな、たまには良いだろ?』
「…流石医療隊長…」
隊士は勿論の事、幹部の健康安定も彼女の仕事の内
幹部は青葉の言葉を聞いた幹部達は、各自様々な反応を見せた
『あ、Dessert…食事後に菓子用意してあっからな』
これに幹部達は、口を閉じるしかなかった
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