苦笑しながらシュガーは、全員にお茶を出す

そのお茶を啜りながら、燐がポツリと呟いた



「大変だな〜名誉騎士も…」

「聖騎士のお前が言う事か?」

『確かに』



シュガーの夫は祓魔塾講師

だが数々の騎士団の貢献より、メフィストと同じ名誉騎士を授与された


だが彼はそんな今でも、現役の祓魔師であり、教師

以前よりは僅かだが、塾で教鞭を振るっていた



「…おお、何だ。来ていたのか」

「お久しゅうです、ネイガウス先生」



リビングに入って来た、眼帯を付ける片目の男性

彼こそシュガーの夫

――…イゴール・ネイガウス



「フッ…もう先生ではないぞ」

「いーじゃん、減るもんじゃねーんだし」



悪戯小僧の様に笑う燐に、ネイガウスは席に着きながら苦笑を漏らす



「燐…聖騎士になっても、お前は相変わらずだな」

「………ひでぇ」

「冗談だ…兎に角。皆、息災で何よりだ」

「はいっ!!」



彼らはネイガウスの教え子

そして…青焔魔の落胤である燐や雪男の、良き理解者でもある



『ゆっくりしてって。仕事の方はどう?』

「ようやく慣れてきました」

「……疲れる」

「そりゃお前だけや」



テーブルにへばる燐を、皆が苦笑する



「兄さん、悪魔の言葉が理解出来るから。しょっちゅう駆り出されてますよ」



青焔魔の力の副産物、というべきか


燐は悪魔の言葉が理解出来る

それは不用意な戦闘を回避出来る、素晴らしい力で


その為か。燐には方々から仕事が舞い込んでくるのだ



「…しかし、誇らしいものだな」

「なにが?」



穏やかに笑むネイガウスは、教え子達を見渡す



「現聖騎士及び、全四大騎士が俺の教え子だと言うのがな…」



そうネイガウスが言うと、皆は顔を見合わせて吹き出した



「何言うはるんですか、ネイガウス先生。僕達も誇らしいですわ」

「子猫丸の言う通りや。現名誉騎士の教え子、なんてな」



そこへやんわりと、シュガーが口を挟む



『雪男は立派な医者になって、しえみはフツヤマを継いで…皆立派になったよ』

「そんな事ないですよ」



雪男は夢を叶え、外科医として日々命を救っている

しえみは母の後を継ぎ、今や立派なフツヤマの女将だ



「そうですよ〜それにシュガー姉さんもです!」

「そうそう!修道院の経営しはる…なんて言い出した時は、ほんま吃驚さましたわ」



彼らが高校を卒業する頃

彼女は突然、修道院の経営をすると言い出したのだ

しかも祓魔師も辞職


これには彼らもだが、メフィストが大いに騒いだ



『前々から考えてたんだよ、修道院の事は。それに皆が立派に巣だったんなら、私が前線に居なくても大丈夫だし』

「そんな事ないと思うわ!」

『それに…ここは、残したかったんだ』

「えっ?」



部屋を見渡したシュガーは、ネイガウスを見やる

すると彼は穏やかな笑みを称えながら、口を開く



「ここは…燐と雪男が育った修道院だからな」

「…シュガー姉さん…ネイガウス先生…」



二人の言葉に燐と雪男は、つい涙ぐむ

彼ら双子にとって二人は、かけがえのない家族なのだ



『だから、はい』

「……なにこれ?何々……っ!?」



いきなりシュガーから渡された手紙に意味も分からず、燐は首を傾げながら中身を見やる

が次第に目を見開き、驚愕の表情を浮かべた



「俺も年だからな、何があるか分からん」

『燐も雪男も成人したしね』

「……」



二人の言葉は呆けている燐には、届いていなさそうで

仕方無く雪男は、燐の隣から手紙を覗き見た



「えっと……ネイガウス夫妻に何かあった場合、奥村兄弟に修道院経営権限を譲渡する……って、本気!?」

『本気。っても、んな簡単にくたばる気は更更ないよ。私達は』



カラカラと笑う彼女に、双子の兄弟は頬を引き攣らせる

何年経過しても、この姉には敵わない。と殊更二人は思う



「…シュガー姉さん」

『あ、それと報告』

「報告?」

『来年、家族が増えますので宜しく』



………………………



「ウソ!マジで!?」

「そら、めでたいわ!」



周囲が歓喜で湧く

だが一人、微動だにしない者がいた



「……………………」



「あのぉ?ネイガウス先生、固まったままなんやけど?」



瞬きすらしないネイガウスに、皆不安になる…



『ああ、言ってなかったから』

「……姉さん」



(ああ。燐も来年には父親だよ)
(うそやぁぁぁぁぁ!!)




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