あれから、数年……

私は……



「待てぇぇぇ!!」

「やだぁぁ!!」



母親になりました

いやもー、これが外も中身もトシさんそっくり



「逃げられたっ!!」

「…毎度毎度アイツも懲りねぇな」

「トシさんからも何か言ってやってよ!」



何か毎回私だけ追い回してる気がするよ!?



「……お前に任す」

「……オイコラ」



全く。こんな所、鈴々姉に見せられないよ…


鈴々姉は、時を越えてやってきた、あの隻眼武将様の妹君

縁合って私と彼女は、互いの世界を行き来してた。本当に今にしてみれば、不思議だよ


でも、鈴々姉に会えたのは偶然じゃない気がする


彼女の強い意思、揺らぐ事のない信念

見習う所が一杯有りすぎて、尊敬さえする



「……鈴々姉…」

『呼んだか』



……………………………………



はい?今、え?



『よぉ』



振り向いてみれば

穏やかに笑む、懐かしい姿がそこにあった


ウッソ、まじで?本物?幽霊とかじゃない…や。足あるわ

……じゃ、ほんとにホント?



「鈴々姉ぇぇ!!」



感極まり、私は鈴々姉に飛びついた

ああ!もー嬉しいよっ!



『…変わってねぇな、お前…』



*****



『………てな訳』

「あ、相変わらず…hardな…」

『喧しい』



感動の再会を果たした俺と和泉…また時間軸違うんかい…

まぁ時間軸は置いといて
互いの近況報告の為に、俺は和泉宅…もとい、土方宅を訪れた



『しかし和泉よ…』

「what?」



和泉が淹れてくれた茶を啜り、俺は安堵の息を漏らす



『漸く餓鬼こさえたか…姉ちゃん嬉しいぞ』

「ブハッ!」

『…行儀悪いな』



何だ、いきなり茶を吹き出して

あーあ。布巾どこだ、布巾?



「す、す、す、す、鈴々、姉?」

『Ah?姉が妹心配して何が悪い?』

「心配するトコ、ズレてるよっ!!」



……お前、変わんねぇな…初な所が特に

あ。それは"こちらの土方"も同じか…似た者夫婦め



『つか餓鬼こさえるのに、お前等どんだけ掛かってんだよ?』

「………それ、トシさんにも言ってよ…」

『心配には及ばねぇ、あれ見ろ』

「…………………あ」



俺の視線の先には、二人の男の姿


片方は和泉側の土方…もう一人は…



「…鈴々姉の土方さん、来てたんだ…」

『今頃発破かけてんじゃね?』



和泉達は初だからなー

こうなってんじゃねぇかと、俺達は予想はしてたらbingo


再び和泉達と会う機会があったら、互いに説教してやろうと意見を交わしてたんだが…

まさかこんなに早く叶うとはな



「てか鈴々姉はどうなん!?」

『俺達?男が一人、春に、も一人増える』

「…………夫婦になって、何年だっけ?」

『Ah-.一年以上は経ってるか?』



口をパクパクさせる和泉に、苦笑しか返せない

お前等と一緒にすんな



「はっ!じゃ鈴々姉、今妊婦!?」

『ま、まぁな…』

「なんちゅう無茶を!?」



気付かなくて、そら当然

まだ腹目立たねぇし


つか何とかなんじゃね?



『まぁ、それは置いといて』

「え?」



いかん。本題を忘れる所だった



『和泉、お前は何があっても…私の妹だ』

「鈴々、姉…」

『例え住む世界が違えど、血は繋がっていなくとも、な』



平行世界と言えど、和泉も激動の時代を駆け抜けた"誠"の"侍"

だがそれ以前に、優しくて寂しがり屋な女子だ



『忘れるな。俺達は"誠"で繋がってる、心で繋がってる。俺達は…"家族"だ』



…例えこれから、二度と会えなくてもな…

ま、大概こういう想定は外れるんだが



「……うん!!」





――…願わくば

――…この妹に幸多からん事を

――…竜の加護があらん事を


――…来世でも、愛しき男と出会える様に





「鈴々姉、やっぱかっこいい!」

『伊達に独眼竜は名乗ってねぇよ』





――…鬼と竜ならば

――…世界の"理"を覆すなど、容易いものだ



――…そうだろ。なぁ、紅桜鬼?



理を越えた絆 完


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